不動産投資家のもふですです。
2021年4月17日に、八王子の築8年のアパートの階段が崩落。。
2階へ階段を上っていた住民の方が亡くなってしまう痛ましい事故がありました。。
築8年という築浅の状態でなぜ階段が崩落してしまったのか、アパートやマンションを保有している不動産投資家の中でかなり話題になりました。
建築会社は則武地所という会社。
かなり安く建築できるけど、品質はあまりよくないと少し話題になっている会社でした。そしてこの事故の調査のため、警察に家宅捜査を受けたことをきっかけに則武地所は破産申し立てを行いました。
この記事では、なぜ階段の崩落事故が起こってしまったのか、不動産投資家としてどのような注意をするべきなのかを解説しました。
もくじ
則武地所のアパート階段崩落事故の状況

八王子の崩落したアパートは、まだ築8年という新しい状態でした。
しっかりとメンテナンスを行えば、築50年のアパートとかでも普通に暮らすことができます。そう考えると、築8年は不動産投資家にとってはかなり新しい状態だといえます。
普通しっかりと建築しておけば、たった8年で階段が崩落するというのは考えられません。(これまでに何棟も買ってきていますし、いろいろな投資家と話をすることも多いですが、階段が崩落したというのを聞いたことがありません)
そのため、何か建築に不備があったと考えられます。
東京新聞によると、
東京都八王子市南新町のアパートで外階段の一部が崩落し、住民の女性が死亡した事故で、階段が当初の設計と異なる形で施工されていたことが、関係者などへの取材で分かった。設計時の鉄骨ではなく、木造だった。防水加工が不十分だったことなどから、つなぎ目などの木材が複数箇所腐食していたとみられ、警視庁捜査一課は、階段崩落との因果関係を調べている。
関係者らによると、アパートは木造3階建てで2013年に完工。当初の設計では、建物と外階段を覆う外壁を木造で仕上げた後、吹き抜け構造になった残りの空間に鉄骨の階段を施工する計画だった。だが、実際は踊り場などが木材などで造られ、そこに鉄製階段が取り付けられていた。
捜査関係者によると、鉄製階段はL字形の金属部品と溶接され、建物の木材部分には1カ所3本のビスで固定されていた。階段のつなぎ目や踊り場内部の木材は腐食していたという。
–東京新聞より引用–
との報道がされています。
本来、鉄骨で施工すべきところを勝手に木造に変更し、防水処理が不十分だったために腐食。
そこから階段が外れ崩落してしまったと考えられているそうです。

踊り場やつなぎの目の箇所は鉄骨で行うのが普通で、木造で行うというのは例がなくあり得ないとのこと。
崩落の2時間前に、木製部品の一部が落下しているのを住民が見つけ、管理会社が修繕したという報道もあります。この時にしっかり修繕できていれば、今回の事故は発生していなかった可能性もありますね。。
則武地所が建築した他のアパートも同様に施工不良が多くある
則武地所が建築したアパートは160棟くらいあると報道されており、残念ながらほかのアパートにも同じように多くの施工不良があると報道されています。

上記の画像でも分かるように、築5年のアパートの階段に隙間がある状態です。
ここから水が入りさびやすくなりそうです。
階段の裏側も、激しくさびています。海が近い場所ならこのように錆びることもありますが、内陸部で築5年の物件でここまで激しくさびている物件を見たことがありません。
専門家の方によると、溶接もひどい状態とのこと。

こちらの画像でも、階段の踊り場の部分が割れていてとても危険な状態です。
階段に錆びた釘がおちていたり、とても危険な状態です。。
このように、階段の踊り場が木造になっており、防水処理ができていないため木が腐って階段が崩落したものと思われます。
猪俣さんのブログに、ほかの則武地所の物件の画像があり参考になります。
かなりいい加減な施工になって、階段がゆがんでいたり、サイディングが曲がっていたり、ちょっとヤバいですね。。
アパート建築にかかわったことがある職人さんのインタビュー
NHKで職人さんのインタビューが取り上げられていました。
工事を行ったのは神奈川県相模原市の建設会社、「則武地所」で、この会社のもとで複数のアパートなどの建設に携わったことがあるという職人の男性がNHKの取材に応じました。
男性によりますと、則武地所が手がけたアパートでは会社の幹部が階段の工事を行っていて、今回、事故が起きた八王子市のアパートのように踊り場に木材が使われるケースが多かったということです。
また、階段の踏み板が人が乗ると曲がるほど薄かったり、接続部分の溶接が不十分だったりと、一見して危険だと分かる状態のものばかりだったとしています。
男性は「階段は踏み板の形がそろっていないような雑な作りで、『これで大丈夫なのか』『落ちるんじゃないのか』と現場の人たちはみんな話していた。怖いので、階段ではなく作業用の足場で上り下りしていたほどだ。則武地所の幹部からは『アパートは入居者にとっては自分の財産ではないので、多少仕上がりが悪くてもクレームはこない』と言われたこともある」と話しています。-NHKニュースより引用–
踏板に人が乗るとまがってしまうほど薄いというのはかなり危険ですし、職人さんも不安に思うレベルの施工だったとのことです。
則武地所が破産を申請

帝国データバンクによると、則武地所が破産を申請しました(帝国データバンク)
帝国データバンクによると、
- 2017年4月期には20億円売り上げ
- 2020年には10億円まで売り上げ減少
- 資金繰りが苦しく給与や取引先の支払い遅延
- 警察の家宅捜査が入ったのを機に事業継続を断念
- 負債総額4億円
とのことです。
事故を起こしてしまったため建築依頼がストップしてしまい資金繰りが急激に悪化し、事業を断念されたのでしょう。
被害者遺族への補償がどうなってしまうのか、刑事責任などがどうなるのかなどまだわからないところもありますが、、
被害者への補償や則武地所への請求は可能なのか
階段崩落で人が亡くなってしまっている大事故の責任は誰にあるのか?
そこは裁判などで争われるでしょう。
一般的には、
- アパートの保有者
- 管理会社
- 則武地所
が責任を負うべきで、刑事と民事の両面から責任が追及されます。
民事事件の損害賠償については、保険でカバーできる可能性があります。
施設賠償責任保険に加入していれば保険請求が可能
不動産を購入する場合、火災保険に入るのは必須です。
火災保険と一言で言っても様々な特約があり、どの特約に入ってどこまで保険でカバーできるのかは様々です。
例えば地震保険に入るかどうか、水害はカバーするのかなど、加入時に決めることができます。
火災保険に入る時に、絶対に入っておいたほうがいいのが施設賠償責任保険です。
施設賠償責任保険とは、自分の保有する物件で何か問題が発生し、周りの人や住民が怪我などを発生させたときに費用を負担してくれる保険です。

例えばビルから看板が落ちて怪我をさせてしまったりした場合など、施設賠償責任保険に加入していると保険が支払われます。
今回のアパート階段崩落事故についても、施設賠償責任保険に加入していたら保険で慰謝料などを支払うことは可能だと思われます。
住宅瑕疵担保責任保険

住宅瑕疵担保責任保険(国土交通省のページを参照)というものがあり、新築を立てた業者さんは必ず入らないといけないルールとなっています。
2000年4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、建築会社などの事業者は建築した住宅を引渡してから10年間、瑕疵担保責任を負わなければならなくなりました。
瑕疵担保責任とは、雨漏りとか何か隠れた不具合があった場合でも10年間は修繕する責任を負うということです。
瑕疵担保責任をがあったとしても、販売業者さんが資金を持っていないと保証することができないため、報奨金を供託するか、住宅瑕疵担保責任保険に加入することが2009年に義務付けられました。
則武地所が住宅瑕疵担保保険に加入している場合、階段の不具合などを修繕する費用を請求できる可能性があります。
則武地所のアパートの階段崩落事故のまとめ
築8年のアパートの階段が崩落するという痛ましい事故が発生してしまいました。
これは本来鉄骨で建築が必要な個所を木造にしたこと、防水処理が不十分で木が腐食して階段が崩落したと可能性が高いということがわかりました。
不動産は人の生活がかかわるとても重要なもので、管理をおろそかにすると人命を失う可能性もあり責任が重大です。
しっかりとした会社で建築し、管理も責任をもって行う必要があります。。
また施設賠償責任保険に加入することもおすすめしています。