お正月に親せきに会ったとき、親戚から相談された。僕が投資で生活していることを知っているから、何気なく聞いたのだろう。
「イオンの株、どう思う? 優待があるって聞いたんだけど」
私の答えは短かった。
「投資家はあまり買わないと思う」。
その場はそれで終わったが、今イオンの株価が急落している。あのときの会話を思い出しながら、なぜ私がそう答えたのか、できるだけわかりやすく書いてみたい。

まず「PER」という指標を知ってほしい
株の割安・割高を測るときに使う基本的な指標に PER(株価収益率) がある。
PER = 株価 ÷ 1株当たりの利益(EPS)
例:株価1000円、1株利益50円 → PER = 20倍
PERが高いほど「利益の割に株価が高い=割高」、低いほど「割安」と読む。業種によって適正な水準は違うが、イオンのような小売・流通業であれば 20〜30倍程度 が一般的な目安だ。
イオンの数字を当てはめると
イオンは1株の利益が10〜20円しかないのに、株価は2000円を超えていた。PERに換算すると 100倍超。小売業の適正水準の3〜5倍以上という水準だ。
わかりやすく言うと… 1億円の不動産を買って、年間100万円の利益にしかならないようなもんだ。純利益率1%となる。(補足…利回りは表面的な収入になるので、PERとの比較する場合は純利益と比較になる。)
数字だけ見れば、明らかに釣り合っていない。
では、なぜ2000円超で買われ続けたのか
答えは 「優待」 だ。
イオンには「オーナーズカード」という株主優待がある。イオンやマックスバリュでの買い物が一定割合でキャッシュバックされる、日常生活に密着した優待だ。主婦層や近くにイオンがある人にとっては非常に魅力的に映る。
その結果、「優待のために買いたい」という需要が積み重なり、業績から計算される適正水準を大きく超えた株価が形成されてしまった。
そして上がっているからみんなほしくなる。株の本来の価値は誰も気にしない。素人が群がっているからだ。
「優待株は、ファンダメンタルズ(業績・財務)ではなく、感情と生活動機で買われる。それが割高を生む構造的な理由だ」
そして、下がり始めたらみんな売る。割高に買っていた人たちは損切りする。下がればまた初心者は売る。そうして一般的には適正な水準に戻る。
「株価が上がるか下がるか」はプロでもわからない
ここで正直に言っておきたいことがある。
投資家であっても、株価が明日上がるか下がるかは基本的にわからない。株価は「需給」で決まる。つまり、買いたい人と売りたい人のバランスだ。どんなに優秀なアナリストでも、短期的な株価の動きを完全に予測することはできない。
私が親戚に「買わない」と言ったのは、「必ず下がる」とわかっていたからではない。
「割高とわかっているものをあえて買う理由がない」 というだけだ。
投資家は常にリスクとリターンを天秤にかけている。PER100倍超の株を買うということは、「今後、利益が急激に何倍にも成長する」か「今の割高状態がずっと続く」かのどちらかに賭けることになる。そのどちらも、イオンという成熟した大企業においては考えにくかった。
優待投資の本当のリスク
優待自体は悪くない。企業が株主への還元策として設けている、正当な制度だ。
問題は、優待の「お得感」が判断を曇らせることにある。
優待株投資でよくある失敗パターン
優待の価値(年間数千円分)に目が向き、株価の割高さを見落とす
「優待がもらえる間は持ち続けよう」と損切りが遅れる
優待廃止・改悪のニュースで株価が急落し、大きな損失を被る
優待を受け取り続けても、株価下落分で完全に相殺される
優待は「おまけ」として考えるべきものだ。業績・割安度・成長性といった本質的な投資判断の後に、おまけとして優待がついてくる——そういう順番で考えるのが、長期的に資産を守る投資の姿勢だと私は思っている。
まとめ
イオン株の急落は、「なぜそれが起きたか」を理解すれば、ある意味では予見可能なことだった。
PER100倍超という水準は、業績の裏付けのない高値だった。それを支えていたのは優待人気という感情的な需要であり、その需要が変化したとき、株価は適正水準へと戻ろうとする力が働く。
「株を買う前に、PERを確認する」——それだけで、今回のような失敗の多くは避けられる。難しい話ではない。ただ、少しだけ立ち止まって数字を見る習慣があるかどうか、それだけの差だ。


