もし一般人から豊かになりたいのなら配当は無視してでも値上がりを取りに行くべき。
「高配当株に投資して、配当金で生活する」——SNSでよく見かけるこの戦略に、私は20年間、真剣に取り組んだことがない。配当を当てにしたことが一度もないと言っていい。
なぜか。数字と構造で説明する。
まず、配当3%の現実を直視する
日本の高配当株の利回りは、おおよそ3%前後が多い。100万円を投資すれば年間3万円の配当を受け取れる計算だ。しかし配当には20%の税金がかかるので、手元に残るのは2.4万円——月にすると2,000円だ。
「生活できる配当収入」を得るためには、単純計算でこの50〜100倍、5,000万円から1億円以上の元本が必要になる。そもそも資産を築く段階の人には、配当収入で生活するという出口が遠すぎる。
年間何百万円も入金できる人なら別だが、僕を含めてほとんどの人はそうではないと思う
複利の力が、税金によって壊される
投資における最大の武器は複利だ。利益を再投資することで、雪だるま式に資産が膨らんでいく。ところが配当投資には、この複利効果を毀損する構造的な問題がある。
配当を受け取るたびに、自動的に20%が課税される。再投資するにしても、すでに目減りした状態からのスタートになる。複利の雪だるまが、転がるたびに削られているようなものだ。
一方、株価が上がり続けている含み益の状態は、売却するまで課税されない。利益が丸ごと次の利益を生む状態が続く。これが複利効果の最大化だ。
配当は「企業の成長機会を削る」行為でもある
もう一つ、見落とされがちな視点がある。
企業が株主に配当を配るということは、その分の資金を設備投資・人材採用・研究開発・M&Aに使えないということだ。本来、成長のために投じるべきお金を、社外に出してしまっている。高配当企業=成長に資金を使えていない企業、という見方もできる。配当が多いほど、将来の株価上昇の余地が小さくなりやすい。
さらに言うと、二重課税の問題も深刻だ。企業はすでに約35%の法人税を支払った後の利益から配当を出している。受け取った株主はそこからさらに20%を取られる。同じお金に対して二度、課税されていることになる。配当から課税するのをやめてほしいとすら思っている。
それでも、配当投資が「向いている人」はいる
配当投資を全否定したいわけではない。向いている人と向いていない人がいる、というのが正確な見方だ。
配当投資が向いているのは、すでに十分な資産を築いており安定したキャッシュフローが欲しい人、あるいは年間数百万円以上を継続的に入金できる収入の高い人だ。
一方、これから資産を築いていきたい段階の人、元本が少なく複利効果を最大化したい人、早期に資産を大きくしたい人には向いていない。資産形成期にある人には、個人的にはお勧めしていない。
「配当投資で成功している人」の共通点
配当投資で実績を出している人を観察すると、実は共通のパターンがある。
彼らは配当を狙っているように見えて、実際には業績が成長し続けている企業を買っている。
売上が伸び、1株当たり利益(EPS)が増えるから株価も上がるし、増配も続く。結果的に配当も増えているが、本質は「業績成長に乗った」ことだ。
配当を選択基準にしているのではなく、成長企業を選んだ結果として配当もついてくる——という順番になっている。
もし配当3%でいいなら、国債も選択肢に入る
少し視野を広げると、米国債や国債の利回りが3〜4%台に達している局面もある。企業リスクを取って高配当株を保有するより、より安全な債券で同等のリターンを得られる可能性がある。「配当が目的」ならば、株式にこだわる必要は必ずしもない。
結論:豊かになりたいなら、キャピタルゲインを狙え
20年間投資をしてきて、配当を当てにしたことは一度もない。むしろ「配当するくらいなら、その資金を自社に再投資して株価を上げてくれ」と思ってきた。
株価が上がっている間は課税されず、複利効果がフル回転する。それが資産形成の最短ルートだと、経験から確信している。
配当は「おまけ」でいい。本命は、企業が成長して株価が上がること——売上が伸び、利益が増え、株価が上がるキャピタルゲインを狙うこと。それが豊かになるための共通項だと、20年間の投資経験から思っている。

