量子コンピューターの実用化はいつなのか。答えを先に言うと、開発している当事者たちが公式に掲げている目標は「2029〜2030年」に見事に揃っています。IBMは2029年に大規模な誤り耐性量子コンピューター「Starling」を、Googleは2029年に「実用的で誤り訂正された量子コンピューター」を、富士通は2030年度に1万量子ビット超のマシンを作ると宣言しています。ただし、その「実用化」はスマホのように1人1台行き渡る話ではなく、大企業や研究機関が特定の計算に使い始めるという意味です。ここを取り違えると、関連株の値動きを完全に読み違えます。
もふもふ不動産のもふです。僕は元キオクシア(旧東芝メモリ)の半導体研究開発者で、実は学生時代は物理学科でボース・アインシュタイン凝縮(BEC)という量子状態そのものを研究していました(所属していた研究室は日本で3番目にBECを実現)。もともと「量子コンピューターを作りたい」と思って量子力学を学んでいた人間です。詳しくは研究開発者としての経歴ページをご覧ください。
この記事では、「実用化はいつか」「なぜニュースが出るたびに関連株が急騰・急落するのか」「量子コンピューターと半導体はどういう関係なのか」「IonQとRigettiは何が違うのか」——この4つの疑問に、技術の中身から順番に答えていきます。技術を理解すると、株価の動きの意味がわかるようになります。逆に技術を知らないまま「量子=次のAI」と思って飛び乗ると、たいてい高いところを買わされます。
前半の内容はYouTube動画でも解説しています(後半の各社動向はメンバーシップ限定動画で扱った内容のダイジェストです)。
よくある質問
量子コンピューターの実用化はいつですか?
開発各社が公式に掲げる目標は2029〜2030年に集中しています。IBMは2029年に論理量子ビット200個の誤り耐性量子コンピューター「Starling」、Googleは2029年に実用的で誤り訂正された量子コンピューター、富士通は2030年度に1万物理量子ビット超のマシンを計画しています。ただしこれは大企業や研究機関が特定の計算に使い始める段階を指し、一般の人が日常的に使うものではありません。ロードマップは遅れることもあります。
量子コンピューターと半導体はどういう関係ですか?
競合ではなく、量子コンピューターは半導体産業の上に乗っています。主流の超伝導量子ビットはシリコンウェハー上に半導体と同じ製造装置で作られ、量子ドット方式はほぼトランジスタそのものです。さらに量子ビットを制御する回路や誤り訂正の高速計算は普通の半導体とGPUが担うため、量子が進むほど半導体の需要はむしろ増える構図になっています。
なぜ量子コンピューター関連株は急騰・急落するのですか?
売上がまだ小さい業界に、国家の支援と技術マイルストーンという材料が断続的に入るためです。2026年5月には米商務省が量子企業9社と総額最大20億ドル(約3200億円)の支援で基本合意し、株式も取得する枠組みが示されました。業績ではなくニュースで動くため、値動きはバイオ株に近い性質になります。
IonQとRigettiは何が違うのですか?
採用する物理方式と事業規模が違います。IonQは真空中のイオンをレーザーで操るイオントラップ方式で、2026年1〜3月期の売上高は6,470万ドル(前年同期比+755%)、現金・投資有価証券は約31億ドル。Rigettiは超伝導方式で、2026年4月に108量子ビット機を提供開始し米商務省と最大1億ドルの支援で基本合意しましたが、直近12か月の売上高は約1,335万ドルと規模が2桁違います。
量子コンピューターができると暗号は破られますか?
ゲート方式の量子コンピューターが十分な規模の誤り訂正付きで実現すると、現在のインターネットやクレジットカードを守る暗号(素因数分解ベース)や、ビットコインの楕円曲線暗号が原理的に解けるようになります。ただし必要な量子ビット数は2029年の計画値よりはるかに大きく、現在のNISQ段階のマシンでは不可能です。各国はそれに備えて耐量子暗号への移行を進めています。
量子コンピューターの実用化はいつ?——各社の目標は2029〜2030年に揃っている
まず一番聞かれる質問から答えます。開発している当事者が公式に掲げている目標は、驚くほどきれいに揃っています。
- IBM: 2029年——誤り訂正済みの論理量子ビット200個で1億回規模の演算を行う大規模FTQC「Starling」を、ニューヨーク州ポキプシーの新データセンターに設置する計画
- Google: 2029年——2021年にピチャイCEOが「10年以内に実用的で誤り訂正された量子コンピューターを作る」と宣言。100万物理量子ビット級が必要とされる目標です
- 富士通: 2030年度——理研・産総研との共同研究で1万物理量子ビット超(論理量子ビット250個相当)。2025年4月に256量子ビット機を出し、2026年度に1,000量子ビットへ拡張する計画
ここで大事なのは、「実用化」という言葉の中身です。2029〜2030年に想定されているのは、材料開発・創薬・金融の最適化といった特定分野の計算を、大企業や研究機関がクラウド越しに使い始める段階。ChatGPTのように一般の人が毎日触るものではありません。そして「ビットコインの暗号が破られる」ようなレベルは、必要な量子ビット数が桁違いに大きく、さらに先の話です。
もう一つ言っておくと、この手のロードマップは技術者の目標であって、約束ではありません。僕自身が半導体の開発現場にいたのでよくわかりますが、ロードマップは普通に遅れます。「2029年に必ず来る」ではなく「2029年に向けてマイルストーンを刻めているか」を見るのが正しい追いかけ方です。
なぜ量子のニュースで株が動くのか——米政府が9社に約3200億円
次に、なぜ関連株がこれほど大きく動くのか。理由は単純で、まだ売上がほとんどない業界に、国家が戦略物資としてお金を入れ始めたからです。
2026年5月、米商務省はCHIPS法の研究開発枠にもとづき、量子技術企業9社と総額最大20億ドル(約3200億円・1ドル160円換算)の支援で基本合意(LOI)したと発表しました。対象はIBM、GlobalFoundries、Rigetti(最大1億ドル)、D-Wave、PsiQuantum、Quantinuumなど。しかも、支援額に見合う株式(少数持分)を政府が取得するという異例の枠組みです。
売上が数十億円規模の会社に、国が数百億円を入れる。株価が跳ねないほうがおかしい。つまり量子関連株が動く材料は、業績ではなく「国策」と「技術マイルストーン」です。ここが普通の株と決定的に違うところで、決算を読んでも値動きは説明できません。結論を先に言うと、技術は本物で夢もあるが、投資としてはバイオ株に近いハイリスク領域というのが僕の見立てです。その理由を、仕組みから順番に説明していきます。
そもそも何が違う?——普通のコンピューターは0と1で動く

量子コンピューターを理解するには、まず普通のコンピューターの原理から。今あなたがこの記事を見ているスマホもPCも、すべてのデータを0と1の並びで表しています。「0なら白、1なら黒」とルールを決めてマス目を塗れば絵が描けるように、画像も音も動画も、全部0と1の羅列です。この0か1かが入る1つの箱をビット(bit)と呼びます。
電気的には「低い電圧=0、高い電圧=1」のように表現し、トランジスタという半導体のスイッチを膨大に組み合わせることで、足し算も掛け算も、AIの計算までも実現しています。半導体の微細化でスイッチの数が増えるほど計算が速く複雑になってきた——これが今のコンピューターの進化の歴史です。
量子ビット(qubit)とは——0と1が重なり合う「シャボン玉」

一方、量子コンピューターの最小単位は量子ビット(qubit、キュービット)です。普通のビットが「0か1のどちらか」なのに対し、量子ビットは0と1が確率的に重なり合った状態を取ります。「0が50%、1が50%で混ざっている」ような、モヤモヤした状態です。
しかもこの状態、観測すると壊れます。見た瞬間に0か1のどちらかに確定してしまい、重ね合わせは消えてしまう。熱でも光でも振動でも壊れる、シャボン玉のように儚いものです。さらに「量子もつれ」という現象もあります。2つの量子ビットをうまく操作すると、片方を観測して0だったらもう片方が必ず1になる、という不思議な連動状態が作れるのです。アインシュタインが「そんなものはおかしい」とパラドックスとして提起した現象ですが、実験で実在が確認されており、量子コンピューターはこの重ね合わせともつれを使って計算します。正直、直感的には誰にも理解できない世界なので、「そういう不思議な状態を使っているんだな」くらいの理解で大丈夫です。

量子コンピューターは万能ではない——ここを誤解すると株で損をする

ここで投資家が一番誤解しやすいポイントを先に言っておきます。量子コンピューターは、今のコンピューターの上位互換ではありません。「量子になれば何でも爆速になる」「NVIDIAのGPUを置き換える」というイメージは、現時点では完全に間違いです。
量子ビットは普通の足し算のような計算はむしろ苦手で、因数分解や組み合わせ探索など、特定の種類の計算だけが劇的に速くなる可能性を持っています。ビットとキュービットは原理からして別物で、得意分野がまったく違う。AIの学習を量子コンピューターが置き換える、といった話も現時点では現実的ではありません。ここを理解しているかどうかで、量子関連銘柄の見え方は大きく変わります。「量子が来たらNVIDIAは終わる」と考えて売買するのは、技術的にまったく根拠がないんですよね。
アニーリング方式とゲート方式——七並べとポーカーくらい違う
「量子コンピューター」とひとくくりに呼ばれるものには、大きく2つの方式があります。同じトランプを使う七並べとポーカーくらい、ルールが違います。

- アニーリング方式——エネルギーの山と谷を用意して量子ビットを「投げ込み」、一番低いところ(最適解)を探させる方式。D-Waveが代表格です。組み合わせ最適化(配送ルート、金融ポートフォリオ、工場の生産最適化など)に特化しています。
- ゲート方式——量子ビットを回路(ゲート)で操作して汎用的な計算をする方式。因数分解(=暗号解読)、分子シミュレーション(創薬・材料開発)などに使えます。Google・IBM・Rigetti・IonQなどが開発しているのはこちらです。
ゲート方式が実用レベルに達すると、現在のインターネットやクレジットカード、ビットコインを守っている暗号が原理的に解けてしまうため、安全保障の観点からも各国が開発を競っています。米政府がお金を入れるのも、この文脈です。
量子コンピューターと半導体の関係は?——量子チップも半導体工場で作られる

「量子ビットを何で作るか」にも複数の方式があります。原子も電子も光も量子の性質を持っているので、どれを使ってもいいのです。主なものは4つ。
- 超伝導方式——極低温で電気抵抗ゼロになった回路(ジョセフソン素子)で量子ビットを作る。集積化しやすく操作が高速な一方、量子状態が壊れやすい。IBM・Google・Rigetti・D-Waveが採用する現在の主流方式です。
- イオン・原子方式——真空中に浮かせたイオンや原子をレーザーで操る。ノイズに強く量子状態が長持ちする(コヒーレンス時間が長い)一方、操作が遅い。IonQなどが採用。「質のいいものをゆっくり」対「壊れやすいものを爆速で」という対比です。
- 光方式——スクイーズド光という特殊な光を使う。通信との親和性が高い。NTTや東京大学などが研究しています。
- 量子ドット方式——半導体のナノ構造に電子を閉じ込める。既存の半導体製造技術と親和性が高く、Intelなどが研究しています。
ここで、半導体をやってきた人間として一番伝えたいことを書きます。「量子コンピューター vs 半導体」ではなく、量子コンピューターは半導体産業の上に乗っています。
- 量子チップ自体が半導体の作り方で作られる——主流の超伝導方式は、シリコンウェハーの上に超伝導の金属配線とジョセフソン接合を、半導体と同じ露光・エッチング装置で描いて作ります。IBMが米政府と10億ドルの支援で基本合意し、量子計算向けのウェハー製造体制を作る計画なのも、支援9社に半導体ファウンドリのGlobalFoundriesが入っているのも、そういう理由です。量子ドット方式にいたっては、作っているものはほぼトランジスタです。
- 量子コンピューターは古典半導体なしでは動かない——量子ビットを操作するマイクロ波を出す装置も、出てきた結果を読み取って誤り訂正をリアルタイムで計算する回路も、すべて普通の半導体(FPGAやASIC)です。量子ビットが増えるほど、この制御用エレクトロニクスの需要も増えていきます。
- GPUの仕事はむしろ増える——量子回路のシミュレーション、誤り訂正の高速な復号、量子と古典を組み合わせたハイブリッド計算は、いずれもGPUの仕事です。「量子が実用化したらGPUがいらなくなる」という筋書きは、少なくとも当面はありません。
つまり量子が進むと、半導体の需要は減るどころか増える。どの方式が最終的に勝つかはまだ誰にもわかりませんが、どの方式が勝っても半導体は必要という構図になっています。ここが投資判断を考えるうえで、僕がいちばん面白いと思っているポイントです(半導体そのものの基礎はこちらの記事で解説しています)。
なぜまだ実用化できないのか——最大の敵はノイズ、NISQからFTQCへ
量子コンピューターの実用化を阻む最大の壁がノイズです。量子ビットは光・熱・振動でいとも簡単に壊れるため、極低温・真空・暗闇という極限環境が必要で、それでも勝手に壊れていきます。おまけに「見たら壊れる」ので、ノイズが乗ったかどうかを直接確認することすらできません。
2001年に量子コンピューターが世界で初めて成し遂げた因数分解は「15=3×5」でした。25年前の最先端がこれです。現在、実用研究の主力機は100量子ビット級まで進み(実験機では1,000量子ビット超の発表もあります)、一部の特殊な問題ではスーパーコンピューターでも解けない計算ができるようになってきました。ここで注意したいのは、量子ビットの数と実用性は比例しないことです。質(エラーの少なさ)を上げようとすると扱える数は減るので、「何量子ビットか」だけで各社を比べても意味がありません。そして今はまだNISQ(ノイズあり中規模量子コンピューター)と呼ばれる段階で、ノイズまみれのまま無理やり計算し、統計処理で答えを推測しています。
次の目標がFTQC(誤り耐性量子コンピューター)です。実はフラッシュメモリやCDも、データが化けるのをECC(誤り訂正符号)で直しながら動いています(ECCについてはこちらの記事で詳しく解説しています)。量子コンピューターでも同じ発想で、検査用の量子ビット(パリティ)を並べてエラーを検出・訂正する研究や、「魔法状態(マジックステート)」と呼ばれる特殊な状態を使って足りない操作を補う研究が急速に進んでいます。大阪大学の藤井啓祐教授らが、この誤り訂正研究の第一人者として知られています。今はちょうど、NISQからFTQCへ飛躍しようとしている過渡期——冒頭に書いた「2029〜2030年」は、この飛躍が終わる予定の年だと理解してください。ここからが後半、各社の現在地です。
Googleはどこまで来たか——Willowと「検証可能な量子優位」
ゲート方式・超伝導で先頭を走る一角がGoogleです。2024年12月に発表した量子チップ「Willow」(105量子ビット)では、量子ビットを増やすほどエラーが減るというエラー訂正の「しきい値越え」を実証しました。エラー訂正の規模を大きくするほど論理エラー率が下がることを示したもので、FTQCへの道筋を付けた歴史的な成果とされています。


さらに2025年10月には、「Quantum Echoes(量子エコー)」というアルゴリズムで、世界初の「検証可能な量子優位」を達成したと発表しました(Nature誌掲載)。スーパーコンピューター上の最速アルゴリズムより1万3000倍高速に計算し、しかも結果を別のマシンで再現・検証できる——2019年の「量子超越」がIBMから「本当にスパコンで解けないのか」と突っ込まれたのに対し、今回は検証可能性まで担保した点が画期的です。分子構造の解析(NMR)への応用も示されており、「使える量子計算」への最初の一歩と評価されています。Googleは6段階のロードマップを公開しており、その終点が冒頭に書いた2029年の「実用的で誤り訂正された量子コンピューター」です。

IBMは2029年に何を出すのか——Starlingと1.6兆円の投資
もう一方の巨人がIBMです。2025年11月に発表した「Nighthawk」は120量子ビットの超伝導プロセッサで、量子ビット間の接続を増やし、従来より30%複雑な回路(2量子ビットゲート5,000個規模)を実行できます。
そしてIBMのロードマップの本命が、2029年に予定する「Starling」。エラー訂正済みの論理量子ビット200個で1億回規模の量子演算を実行する、大規模FTQCの計画です。そこに至る途中の機種名まで公開されていて、誤り訂正の物理量子ビット数を約9割減らすqLDPC符号を試す「Loon」(2025年)、量子メモリと論理演算を組み合わせる「Kookaburra」(2026年)、チップ同士を接続する「Cockatoo」(2027年)——と1年刻みで階段が引かれています。
そして2026年6月、IBMは今後5年で量子コンピューティングに100億ドル(約1.6兆円・1ドル160円換算)超を投じると発表しました。米政府と基本合意した10億ドルで量子専用ウェハー製造の体制も作る計画とされており、国策企業の色も帯びてきています。「2029年にFTQC」が本気のスケジュールとして語られ、そこに1.6兆円が張られた——僕が学生の頃には想像もできなかった状況で、素直にすごい時代になったと思います。
IonQとRigettiの違いは?——イオンと超伝導、規模も業績も違う
個人投資家が直接買える「量子ピュアプレイ銘柄」の代表が、IonQ(アイオンキュー)とRigetti(リゲッティ)です。名前がセットで語られがちですが、中身はかなり違う会社です。
- IonQ——イオントラップ方式。真空中のイオンをレーザーで操る方式で、ノイズに強く量子ビットの質が高いのが売り。操作速度は遅いという弱点があります。2026年1〜3月期の売上高は6,470万ドル(前年同期比+755%)、手元の現金・投資有価証券は約31億ドルと、量子ベンチャーとしては別格の資金力を持っています。買収を重ねて量子通信やセンシングにも手を広げているのが特徴です。
- Rigetti——超伝導方式。IBM・Googleと同じ土俵で、9量子ビットのチップレットを12枚並べる独自のモジュラー構造が強み。2026年4月に108量子ビットの「Cepheus-1-108Q」を一般提供開始しました(AmazonのクラウドサービスBraket初の100量子ビット超のゲート方式マシン)。2026年5月には米商務省と最大1億ドルの支援で基本合意しています。ただし直近12か月の売上高は約1,335万ドルと、事業規模ではIonQと2桁違います。
| 項目 | IonQ | Rigetti |
|---|---|---|
| 量子ビットの方式 | イオントラップ(真空中のイオン) | 超伝導(ジョセフソン素子) |
| 強み | 量子ビットの質が高くノイズに強い | 操作が高速で集積しやすい |
| 弱み | 操作が遅い | 量子状態が壊れやすい |
| 株価(2026年9月4日) | 39.52ドル | 15.20ドル |
| 52週レンジ | 25.89〜84.64ドル | 12.53〜58.15ドル |
| 時価総額 | 約157億ドル | 約51億ドル |
| 直近12か月の売上高 | 約2億4,600万ドル | 約1,335万ドル |
| 時価総額÷売上高 | 約64倍 | 約380倍 |
株価・時価総額・売上高は2026年9月4日時点(Yahoo! Finance・stockanalysis.com)。以下の2枚は動画収録時点(2026年6月)の参考画面です。


ざっくり言うと、IonQは「資金と売上が先行するイオン派」、Rigettiは「主流方式で戦う小さな挑戦者」。同じ「量子関連株」でも、賭けている物理方式が違うので、片方が勝てばもう片方が負ける可能性すらあります。セットで買っても分散にならないかもしれない、というのが僕の見方です。
なお、両社のマシンはAmazon Braket経由で誰でも使えます。IQM(超伝導)やQuEra(中性原子)も揃っており、クラウド経由で量子コンピューターを叩ける時代はすでに来ています。

【2026年9月時点】量子関連株の現在地——Quantinuum上場と株価の現実
この1年で業界の景色が大きく変わったので、2026年9月時点の状況を追記しておきます。
最大のニュースは、Quantinuum(クオンティニュアム)のナスダック上場です。ハネウェル系のイオントラップ企業で、2026年6月4日に公開価格60ドルで上場(ティッカーQNT)。16.8億ドルを調達し、初日終値ベースの時価総額は約157億ドル——後述するIonQと肩を並べる規模です。量子業界としては過去最大の資金調達でした。ただし初値68ドルで買われたあと、終値は公開価格とほぼ変わらない水準まで押し戻されています。期待だけでは支えきれないという市場の空気が、そこには出ています。
そして株価。2026年9月4日時点の数字を並べると、テーマ株の現実がよくわかります。
- IonQ: 39.52ドル(52週レンジ25.89〜84.64ドル)。時価総額は約157億ドルで、直近12か月の売上高2億4,600万ドルに対して約64倍
- Rigetti: 15.20ドル(52週レンジ12.53〜58.15ドル)。時価総額は約51億ドルで、直近12か月の売上高1,335万ドルに対して約380倍。年初来では3割超の下落です
どちらも高値から半値以下まで落ちています。国が数千億円を入れ、IBMが1.6兆円を張り、技術のマイルストーンは着実に刻まれている。それでも株価はこれだけ下がる——ここが「技術の進歩」と「株の値動き」が別物であることの、いちばんわかりやすい実例だと思います。ニュースが出た瞬間に飛び乗る人が高値をつかみ、半年後に投げる。テーマ株はいつもこの繰り返しなんですよね。
量子関連株は買いか(個人的見解)——プラズマテレビとガラケーの教訓
最後に、投資先としての僕の見立てです。ここは完全に個人的見解です。
- どの方式が勝つか、まったくわからない——超伝導かイオンか光か、それとも全然別のダークホースか。プラズマテレビと液晶テレビの戦いでプラズマが消え、そこに有機ELが現れたように、そして「iPhoneはガラケーに勝てない」と言われていた15年前のように、技術の勝者を事前に当てるのはプロでも困難です。身近な家電ですら外すのに、海のものとも山のものともつかない量子方式を当てるのは、さらに難しい。
- できても、すぐには儲からないかもしれない——量子コンピューターが完成しても、使うのは当面、超大企業・金融機関・学術研究が中心。ChatGPTのように一般人が毎日使うものにはなりにくく、「1家に1台」の爆発的な市場拡大は現時点では描きにくいです。売上がまだ小さいのに株価だけが先行する構図は、バイオ株に近いと思っています。
- それでも、夢はある——今の量子コンピューターは1940年代のコンピューターと同じ位置にいます。当時、爆弾の弾道計算をしていた機械が、80年後に1人1台のスマホでAIを動かすなんて誰も想像できませんでした。同じように、80年後には想像もつかない使い方が生まれているかもしれない。国家も本気でお金を入れ始めました。
なので僕のスタンスは、「大きなお金を張る対象ではないが、技術の進捗はワクワクしながら追いかける」です。僕自身は、触るとしても失っても構わない金額しか使いませんし、株価ではなく「エラー訂正のマイルストーン」を見て進捗を判断しています。元・量子を研究していた投資家としては、それが納得できる付き合い方です。各社の進捗はこれからも追いかけていきます(四半期ごとの細かい動きはメンバーシップ限定動画でも解説しています)。
まとめ
量子コンピューターのエラー訂正の考え方は、実はフラッシュメモリのECCと地続きです。ECC(誤り訂正符号)を深掘りした記事や、僕が量子力学の研究から半導体開発に進んだ経歴もあわせて読むと、この記事の解像度がさらに上がるはずです。




