半導体メモリの種類と違いをわかりやすく解説——SRAM・DRAM・HBM・NANDは何が違う?元キオクシア研究開発者が基礎から

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もふもふ不動産のもふです。僕は元キオクシア(旧東芝メモリ)の半導体研究開発者で、ソニー・キオクシアで16年、先端半導体の研究開発に携わってきました。キオクシアでは3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の研究開発を第0世代の立ち上げから担当し、量産にも参画しています(詳しくは研究開発者としての経歴ページへ)。いまは自分の会社を10年経営しながら、株式投資家(投資歴20年)として半導体・AI関連に投資しています。

半導体メモリにはSRAM・DRAM・HBM・NANDフラッシュという種類があり、それぞれ速さ・値段・容量・「電源を切っても消えるか」が全く違います。いま、キオクシアやマイクロン、SK hynixといったAI向けの半導体メモリを作っている会社の株が爆上げしていますが、「そもそも半導体のメモリって何?」「HBMとDRAM、NANDは何が違うの?」と聞かれて答えられる人は意外と少ない。この記事では、メモリの研究開発を12年やってきた元研究開発者として、「メモリとは何か」の基礎の基礎から、4種類のメモリの違い、なぜ今メモリがこれほど重要なのかまで、わかりやすく解説します。

よくある質問
半導体メモリとは何ですか?

0と1のデジタルデータを保存する半導体の部品です。コンピューターのデータは動画も文章もすべて0と1の並びで表されており(例: アルファベットのAは01000001)、それを保存する箱がメモリです。半導体メモリが生まれる前は磁気テープやパンチカードで物理的に保存していました。

SRAM・DRAM・HBM・NANDフラッシュの違いは何ですか?

SRAMはトランジスタ6個で1ビットを保持する最速のメモリで、CPUやGPUの内部キャッシュに使われますが大きくて高価です。DRAMはトランジスタ1個+コンデンサ1個で安く作れるメインメモリで、リフレッシュが必要で電源を切ると消えます。HBMはDRAMをTSVで積層してGPUの真横に置いた超高速・超高価なAI向けメモリです。NANDフラッシュは浮遊ゲートに電子を閉じ込めることで電源を切ってもデータが消えず、低速ですが安く大容量で、SSDやスマホに使われます。

HBMとDRAMの違いは何ですか?

HBMは中身はDRAMですが、DRAMチップを12層・16層と縦に積み重ね、TSV(貫通電極)で上下を直結し、CoWoSでGPUの真横に載せたものです。基板上に離れて挿さっている通常のDRAMモジュールと比べて配線が桁違いに短いため、データ転送の帯域が非常に太く、AIの学習・推論に必須になっています。その代わり製造が難しく非常に高価です。

DRAMとNANDフラッシュの違いは何ですか?

DRAMはコンデンサに電気を溜めて記憶するため高速でランダムアクセスに強い一方、電気が漏れるのでリフレッシュが必要で、電源を切るとデータが消えます。NANDフラッシュは浮遊ゲートなどに電子を閉じ込めて記憶するため電源を切っても消えず、安く大容量に作れますが、DRAMより遅くランダムアクセスも苦手です。DRAMは机の上、NANDは本棚という役割分担です。

HBMはなぜAIに必要で、なぜ枯渇しているのですか?

AIの計算ではGPUとメモリの間のデータのやり取りがボトルネックになるため、DRAMを積層してGPUの真横に置き、帯域を桁違いに太くしたHBMが必須になっています。1個作るのに大量のウェハーを消費し、積んだチップのどれか1つでも不良なら全体が不良になるため良品を作るのが難しく、価格が高く供給が不足しています。

3次元フラッシュメモリ(BiCS)とは何ですか?

平面で微細化するのが限界になったNANDフラッシュを、1階建てから高層ビルのように縦に積んだメモリです。東芝(現キオクシア)が2007年のVLSIシンポジウムで発表し、電極の層を積んでから一気に穴を開けてセルを作るため、層を増やしてもコストが跳ね上がらない(Bit Cost Scalable)のが特徴です。開発チームは2024年にFMSの生涯功績賞を受賞しました。

HBMが十分に供給されるようになったらNANDフラッシュは不要になりますか?

筆者はむしろ逆と考えています。HBMは容量・コスト・電力の面で限界に近づいており、推論であふれるデータをSSD(NAND)で受け止めるCMX、GPUとSSDを直結する超高IOPS SSD、NANDをHBMのように積層するHBFなど、AIサーバーの中にNANDを組み込む動きが加速しています。DRAMとNANDは上下関係ではなく、速度と用途が異なる適材適所の関係です。

半導体メモリの種類は4つ——SRAM・DRAM・HBM・NANDの違いを一覧で

メモリの種類の図。CPUとDRAM、GPUとHBM、長期記憶のSSDの構成図に、HBMは超高速・超高価・中容量・電源OFFで消える、DRAMは高速・高い・中容量・電源OFFで消える、NANDは低速・安い・大容量・保存可能という比較表
AIサーバーのメモリ構成と3種類の特徴。速いほど高くて容量が小さく、電源を切ると消える。SRAMはCPU・GPUの内部にあるため図では省略(動画スライドより)

まず全体像です。パソコンやAIサーバーの中には、役割の違うメモリが階層になって入っています。

  • SRAM——CPUやGPUの中に直接作り込まれた、最も速いメモリ
  • DRAM——CPUの隣にあるメインメモリ。高速だけど電源を切ると消える
  • HBM——DRAMを積み重ねてGPUの真横に置いた、AI向けの超高速メモリ。超高価
  • NANDフラッシュ(SSD)——長期保存用。遅いけど安くて大容量で、電源を切っても消えない

ざっくり言うと、脳みそ(CPU・GPU)に近いほど速くて高くて容量が小さく、遠いほど遅くて安くて容量が大きい。ハードディスクが倉庫だとすると、NANDフラッシュは本棚、DRAMは机の上、SRAMは頭の中、というイメージです。AIを計算するには、この全部が必要になります。1つずつ見ていきましょう。

メモリとは何か——0と1を保存する箱

メモリとは何かの図。0と1のデジタルデータを保存できるもの。コンピューターのデータはすべて0と1で、Aは01000001、Iは01001001。データを保存するためには0と1を保存する→メモリの誕生
コンピューターのデータはすべて0と1。アルファベットの「A」も「01000001」という8桁の0と1で表される(動画スライドより)

そもそもメモリとは、0と1のデジタルデータを保存する箱のことです。パソコンやスマホで動いているデータは、動画も音楽も文章も、すべて0と1の羅列です。この記事の文字も、たとえばアルファベットの「A」は「01000001」、「I」は「01001001」という0と1の並びで表されていて、それを画面に表示するときに文字に変換しているだけなんですね。

だから「データを保存する」というのは「0と1を保存する」ということで、そのための箱がメモリです。半導体メモリが生まれる前は、磁気テープや、穴が開いているかどうかで0と1を表す「パンチカード」で物理的に保存していました。それが半導体でできるようになった、というのがメモリの誕生です。

SRAMとは——CPUの中に直結した「社長の頭の中」

一番速いのがSRAM(スタティックRAM)です。あまり聞いたことがないかもしれませんが、AppleのM4のようなCPUや、NVIDIAのGPUの中には必ずSRAMが入っています。外から読み込んだデータを一時的に蓄える場所で、パソコン好きの方なら「L1キャッシュ」「L2キャッシュ」と聞けばピンとくると思います。あれがSRAMです。

チップの中にあるので爆速。脳みそに直結しているイメージです。その代わり容量を大きくできないので、めちゃめちゃ高い。単体のSRAMチップも今も存在しますが、主戦場はCPUやGPUの内部に作り込まれたキャッシュです(SRAMを大量に並べてAIチップを作るCerebrasのような会社もあります)。

そもそもトランジスターとは?の図。半導体で作られる電気で駆動する小さなスイッチ。0Vをかけると電気が流れず、1Vをかけると電気が流れる
トランジスタは電気で制御できる小さなスイッチ。0Vなら電気が流れず、1Vをかけるとスイッチが入って電気が流れる(動画スライドより)

SRAMの仕組みを知るには、まずトランジスタを押さえる必要があります。トランジスタは、半導体で作られた「電気で制御できる小さなスイッチ」です。制御用の端子に0Vをかけると電流が流れず、1Vをかけるとスイッチがオンになって電流が流れる。CPUの中には、このスイッチが何百億個も入っています。

トランジスタを組み合わせたSRAMの回路図。2つのCMOSインバーターを向かい合わせにした構造で、トランジスタ6個でやや大きいが高速動作、トランジスタで作れるのでCPUの中に直接作れる(L1キャッシュ等)、電源を消すと消える
SRAMの回路。インバーターを2つ向かい合わせにした形で、1ビットにトランジスタが6個必要(出典: Semi Journal・動画スライドより引用)

SRAMは、このトランジスタを6個組み合わせて0か1を保持します。回路図を覚える必要は全くないのですが、インバーター(反転回路)を2つひっくり返してくっつけたような形で、書き込み線と読み出し線がついています。トランジスタだけで作れるのでCPUの中に直接作れて高速。でも1ビットに6個も使うのでバカでかく、値段が高い。だからCPUの中にたくさんは入れられない。これがSRAMの長所と短所です。

ちなみに、僕と同世代(アラフィフ)なら覚えていると思いますが、ファミコンの「ドラゴンクエストIII」で初めてデータをセーブできるようになって感動しませんでしたか?「II」までは「復活の呪文」という長い文字列を書き写さないといけなかったのが、「III」からは「ぼうけんのしょ」に保存できるようになった。あのカセットの中に入っていたのがSRAMです。ただし電源を切ると消えてしまうので、ボタン電池を入れて電気を供給し続けていました。電池が切れると「ぼうけんのしょが消えました」となるわけです。僕が初めて半導体メモリを使ったのは、たぶんあのときです。

DRAMとは——SRAMとの違いはコンデンサ。パソコンのメインメモリ

SRAMは簡単に作れるけれど、1ビットにトランジスタ6個は大きすぎて高い。もっと安く、もっと大量のデータを保存したい。そこで発明されたのがDRAM(ダイナミックRAM)です。アイデアは「コンデンサを使おう」でした。

コンデンサーとは?の図。2枚の電極板の間に絶縁体を挟んだ構造で、電池をつなぐと電荷が溜まる。水を溜めるコップの写真も添えられている
コンデンサは電気を溜める「コップ」。電気が溜まっているかいないかで0と1を表す(出典: 日本電気技術者協会・動画スライドより引用)

コンデンサは、電気を溜めておける部品です。電気を水にたとえると「コップ」ですね。プラスとマイナスの電圧をかけると電気が溜まる。電気が溜まっていれば1、溜まっていなければ0、というふうに0と1を保存しようというのがDRAMです。

DRAMの構造図。トランジスタ+コンデンサで実現。格子状に並んだセルに0と1が書き込まれている配列図と、ワード線・ビット線・トランジスタ・キャパシタからなる1セルの回路図
DRAMは「トランジスタ1個+コンデンサ1個」で1ビット。格子状に並べて、電気を入れたり抜いたりしてデータを書き込む(出典: Semi Journal・動画スライドより引用)

構造は、トランジスタ(スイッチ)の先にコンデンサをつけただけ。スイッチをオンにして電気を入れれば「1」、電気を抜けば「0」の書き込みです。これを格子状に大量に並べます。トランジスタ1個+コンデンサ1個で1ビットなので、SRAMの6個と比べてはるかに小さく作れて、コストが劇的に下がる。それでDRAMが世の中に普及し、SRAMはCPUの中だけで使われるようになりました。

今のDRAMの断面構造の3D図。下にトランジスタ、その上に縦長の円筒形のキャパシタが林のように並ぶ
現在のDRAMの断面。下にトランジスタ、上に縦長の円筒形コンデンサを林のように立てて面積を稼ぐ(出典: 東京エレクトロン・動画スライドより引用)

今のDRAMの断面を見ると、下にトランジスタを作り、その上に縦長の円筒形のコンデンサを林のように立てています。昔は下に穴を掘って作る「トレンチ型」もありましたが、今は上に積み上げるのが主流です。

DRAMには弱点もあります。コンデンサに溜めた電気は、放っておくと少しずつ漏れていくんです。だから定期的にデータを読み出してもう一度書き戻す「リフレッシュ」が必要で、これをパタパタと繰り返している分、消費電力が高めです。一方、好きな場所のデータをパッパッと読めるランダムアクセスが速いという強みがあり、プログラムを動かすCPUとは非常に相性がいい。だからパソコンのメインメモリはDRAMなんですね。

HBMとDRAMの違い——DRAMを積み重ねて貫通させたAI向け超高速メモリ

HBM(High Bandwidth Memory)の登場の図。基板上のDRAMモジュールとCPUの間は配線が太く電気を流すのが非常に遅くデータのやり取りが遅い・電力も食う。そこでDRAMチップを重ねて電極を貫通させてくっつけると超高速になる(コップが小さくなる)
基板の上で離れているDRAM同士・DRAMとCPUの間は配線が長くて遅い。ならば重ねて貫通させてくっつけよう、というのがHBM(動画スライドより)

ここからがAIの話です。自作パソコンを組んだことがある人ならわかると思いますが、DRAMは基板の上にモジュールとして挿さっていて、DRAM同士も、DRAMとCPUも、けっこう距離が離れています。距離が離れていると、データのやり取りが遅くなるんです。0と1のやり取りは「コップに水を入れたり抜いたり」なので、配線が長いと余計な容量(コップ)が増えて、動作が遅くなるし電力も食う。

「じゃあ、ガチャっとくっつけてしまえばいい」。DRAMのチップを何枚も重ねて、上下に電極を貫通させて直結する。これが今話題のHBM(High Bandwidth Memory・高帯域幅メモリ)です。

TSV(スルーシリコンビア)の図。ワイヤーボンディングとの比較で、TSVは半導体チップを重ねて電極で貫通させて接続する構造。半導体同士をくっつけて電極で貫通という注記
TSV(スルーシリコンビア)。ペラペラに磨いたチップに穴を開け、銅の電極で貫通させて上下を直結する(出典: 東京エレクトロン・動画スライドより引用)

重ねたチップを貫通させる技術がTSV(Through Silicon Via・スルーシリコンビア)です。チップをペラペラに薄く磨いて、穴を開け、銅のプラグ(貫通電極)で上下のチップを直接つなぐ。上と下が最短距離でつながるので、爆速でデータをやり取りできます。

SK hynixの「次世代GPU向けHBM」が量産段階に入ったのは2014年ごろで、当時の報道(PC Watch)では「1TB/秒を実現する次世代GPU向けメモリ」として、DRAMを4枚重ねて1秒でiPhone1台分のデータを転送できる速さ・消費電力は3分の1、と紹介されていました。ただ当時は値段が非常に高く、正直「これ、どこで使うんだ?」という空気で、僕自身もよく知りませんでした。それがAIの登場で一気に日の目を浴びて、今やAIサーバーに必須の部品になっています。

SK hynixのHBM4の展示写真。パッケージ基板の上にDRAMチップを多層に積み重ねたHBMの断面模型
SK hynixのHBM4の展示模型。DRAMを12層・16層と積み重ねる(動画スライドより)

最新のHBM4では12層・16層とDRAMを積み重ねてTSVで貫通させていて、もう凄まじいことになっています。「これ以上は積めないのでは」「熱が逃がせなくて焼き切れる」という限界も見えてきていて、水で冷やすのかなど、次をどうするかが大きなテーマです。NVIDIAとSK hynixが緊密に組んでいるのは、この先を一緒に開発していくためだと僕は見ています(詳しくはSK hynixのHBM解説記事へ)。

CoWoS——GPUとHBMを1つのパッケージに載せる3次元実装

CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)の断面図。シリコンインターポーザーの上にGPUとHBMを並べて載せ、その下にパッケージ基板、さらに回路基板がある。半導体プロセスで接続し超高速通信。第2のボトルネック(HBM)の注記
CoWoS。シリコンの土台(インターポーザー)の上にGPUとHBMを並べて載せ、半導体プロセスの細い配線で直結する(出典: EE Times・動画スライドより引用)

DRAMを重ねてHBMにしても、まだGPUとの間の距離が邪魔です。「ここもくっつけてしまえ」というのが今の最先端で、それがCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)というTSMCの技術です。

シリコンでできた土台(シリコンインターポーザー)の上にGPUとHBMを並べて載せ、その下にパッケージ基板(イビデンなどが作っている基板です)を置く。GPUとHBMの距離が1cmほどになって、半導体プロセスの細い配線で直結されるので、爆速でやり取りできます。これが3次元実装です。

AI半導体は「メモリがボトルネックで学習が遅い」「推論でメモリが足りない」という問題を抱えているので、GPUの真横にHBMを載せて即やり取りできるようにした。これが基本構造です。ただし、HBMは1個作るのに大量のウェハーを消費するうえ、積んだチップのどれか1つでも壊れたら全部ダメになるので、良品を作るのが非常に難しい。だからめちゃめちゃ高いし、枯渇しているわけです。

DRAMの特徴と日本のDRAMが負けた歴史

DRAMの特徴をまとめると、安く作れて高速、ランダムアクセスができてCPUと相性がいい、CPUやGPUと直結して計算に必須。ただし電源を切ると消える「揮発性」で、リフレッシュが必要なので消費電力も高め。「ぼうけんのしょ」と同じで、電気がなくなると消えてしまうので、動画や写真をずっと保存しておく用途には別のメモリ(フラッシュ)が必要になります。役割が全然違うんですね。

DRAMのシェアの推移グラフ(1975年〜2010年ごろ)。日本が1980年代後半に80%近くまで上昇したあと急落し、韓国が台頭して首位に。米国は下がり、台湾も一部シェアを持つ
DRAMの国別シェアの推移。1980年代は日本が8割近くを握ったが、その後は韓国が首位に(出典: 日経クロステック・動画スライドより引用)

参考までにDRAMのシェアの歴史も。1980年代、日本は世界のDRAMの8割近くを作っていた時期があります。それがヒュルヒュルと下がって、最後に残ったエルピーダメモリも2012年に経営破綻し、今はマイクロンの広島工場が残るのみ。DRAMを作っている日本企業はもうなく、韓国のサムスンとSK hynixが非常に強い時代です。なぜ負けたのかは、あとで「重要なスペック」のところで触れます。

NANDフラッシュとDRAMの違い——電源を切っても消えない「本棚」

次がフラッシュメモリです。本棚のようなもので、電源を切ってもデータが消えないのが最大の特徴。本棚(フラッシュ)から机の上(DRAM)にデータを展開して仕事をする、というイメージです。作っているのはサムスン・SK hynix・キオクシア・マイクロン・サンディスクの主要5社で、そこに中国のYMTCが追い上げている構図です(YMTCの解説記事参照)。

フラッシュメモリを発明したのは、東芝の舛岡富士雄さんです。1980年にNOR型フラッシュ、1986年にNAND型フラッシュを発明し、今の主流はNAND型です。電源を切っても消えず、しかも安く大容量にできる半導体メモリ(フラッシュ)を発明したわけで、ボタン電池でしか保存できなかったドラクエの時代を考えると、これは本当に革命的なパラダイムシフトでした。

Flashメモリの構造図。制御ゲート・絶縁膜・浮遊ゲート(フローティングゲート)・トンネル酸化膜・ソース・ドレインからなる断面。浮遊ゲートに電子を入れ、電子があると0、電子がないと1
フラッシュメモリの構造。トランジスタの途中に「浮遊ゲート」という電子の箱を作り、電子が入っているかどうかで0と1を記憶する(出典: Semi Journal・動画スライドより引用)

どうやって電源なしでデータを保持しているのか。トランジスタの途中に「浮遊ゲート(フローティングゲート)」という電子の箱を作ってあげるんです。そこにトンネル効果で電子を入れ込む。電子が入っていれば0、いなければ1(逆に定義する場合もあります)。箱に電子を閉じ込めるので、電源を切っても電子はそこに居続ける。だからデータが消えません。

これ、僕はずっとこの研究開発をやってきましたが、今考えてもすごいことだと思います。絶縁体の壁を、電子が量子力学のトンネル効果で「すり抜けて」箱に叩き込まれる。知っていても、頭の中で想像すると変な感じがしていました。

読み出しの仕組みも賢くて、普通のトランジスタは電圧をかけると電流が流れますが、箱に電子が入っているとその電子が邪魔をして電流が流れなくなる。電流が流れるか流れないかを見れば、電子がいるかいないかがわかる。中に人がいるかどうか、ドアをコンコンとノックして返事があるか確かめるようなものですね。

FlashメモリのNAND型とNOR型の構造比較図。NAND型はメモリセルが直列に接続され超シンプルで安く作れる。NOR型はメモリセルが並列に接続されている
NAND型(左)はセルを直列につないだ超シンプルな構造で安く小さく作れる。NOR型(右)は並列でランダムアクセスが速い(出典: Semi Journal・動画スライドより引用)

NAND型とNOR型の違いも一応。NAND型はセルを一直線に直列につないだ構造で、1つだけ動かすのは苦手(ランダムアクセスが弱い)ですが、超シンプルなので安く小さく作れる。NOR型はDRAMのようにセルを並列につないでランダムアクセスが速い代わりに、面積が大きい。僕もNORをやっていたことがありますが、今はほぼNANDの時代です。NANDの書き込みと消去は基本的にトンネル効果で電子を出し入れしていると思ってもらって問題ありません(NORでは電子を走らせて叩き込む「チャネルホットエレクトロン注入」で書き込むものもあります)。

フラッシュメモリは本当に世界を変えました。デジタルカメラのメモリーカード、iPod nano、iPhone、そしてハードディスクだったパソコンの記憶装置がSSDに。昔はハードディスク入りの音楽プレーヤーでジョギングすると音が飛んだものですが、フラッシュのおかげでそんな時代は終わりました。

3次元フラッシュメモリ——1階建てを高層ビルにした日本発の技術

3次元Flashメモリへ…の図。もっと大容量のメモリが必要→もっと小さく作りたいが、加工の限界・隣接間の電子の反発・電子の個数が減り保持性の劣化などで小さくできない。1階建てだったのを高層ビルにすればいいのでは?→3次元Flashメモリへ
平面で小さくするのは限界。「1階建てを高層ビルにすればいい」という発想の転換が3次元フラッシュ(出典: 東芝・動画スライドより引用)

もっと大容量にしたい。そのためにはもっと小さく作りたい。ところが、平面で小さくしていくと限界が来ます。加工の限界に加えて、隣のセルの電子と反発したり、電子の箱が小さくなりすぎて入る電子の個数が減り、データを保持できなくなったりする。

そこで出てきたのが「1階建てだったものを高層ビルにすればいいのでは?」という発想です。今まで平面に並べていたセルを縦に積む。これが3次元フラッシュメモリで、2007年に東芝が「BiCS FLASH」として発表しました。

3次元Flashメモリの構造3D図。赤い電極板が何層にも積み重なり、緑色の柱が縦に貫通している。高アスペクト比のMANOS積層構造、SiN選択エッチング+W埋め込みなどの注記
3次元フラッシュの構造。電極の板を何層にも積み、縦に穴を開けて柱状のメモリセルを一括で作る(出典: 東芝・動画スライドより引用)
BiCS FLASHの製造工程の図(Tanaka et al., 2007 VLSI Tech.)。STI、下部選択ゲート、制御ゲートの積層、メモリホールの開口、メモリプラグ、上部選択ゲート、配線までの11工程
BiCS FLASHの製造工程。層を積んでから一気に穴を開けるので、層を増やしてもコストが跳ね上がらない(出典: H. Tanaka et al., 2007 VLSI Symposium・動画スライドより引用)

なお、今の3次元フラッシュでは、浮遊ゲートの代わりに絶縁膜の中に電子を捕まえる「チャージトラップ型」(図中のMANOS膜)が主流です。電子を箱に閉じ込めて記憶する原理は同じです。

BiCSのすごいところは、層を増やしてもコストがそれほど上がらないことです。普通に1層、2層、3層と順番に作っていくとコストが跳ね上がりますが、BiCSは電極の板を先に何層も積んでから、縦に一気に穴を開けてメモリセルを一括で作る。だから「ビットコストがスケーラブル(Bit Cost Scalable)」、略してBiCSと呼んでいました。

2024年のFMS(Future of Memory and Storage)では、この3次元NANDフラッシュの開発で東芝(現キオクシア)の5人(Hideaki Aochi・Ryota Katsumata・Masaru Kito・Masaru Kido・Hiroyasu Tanakaの各氏)が「生涯功績賞」を受賞しました。実はこの方々は、僕が当時仕えていた上司・先輩たちです。僕は2010年ごろからこの方々のもとで3次元フラッシュの研究開発をずっとやってきて、それが今、世界中のスマホやSSDやAIサーバーで使われている。本当にすごいことだと思っています。

CBA——メモリと回路を別々に作って貼り合わせる最新技術

さらに高密度化へ!周辺回路を分離し、張り合わせる(キオクシア)の図。CNA(CMOS Next to Array)、CUA(CMOS Under Array)から、CBA(CMOS directly Bonded to Array)へ。メモリセルアレイとCMOS回路を別々のウェハーで作って貼り合わせるBiCS FLASH gen.8
キオクシアのCBA(CMOS directly Bonded to Array)。メモリ部分と回路部分を別々のウェハーで作り、貼り合わせる(出典: キオクシア・動画スライドより引用)

キオクシアの新技術として、もう1つCBA(CMOS directly Bonded to Array)を紹介しておきます。メモリ部分(セルアレイ)と、それを制御する回路部分(CMOS)を別々のウェハーで作って、ガッチャンと貼り合わせる技術です。

今までは1枚のウェハーの上に両方を一緒に作っていたのですが、メモリを作る工程で回路にダメージが入ったり、回路を作る工程でメモリにダメージが入ったりして、どちらも性能を引き出しきれませんでした。全然違うものを同じ場所で作っているので当然ですよね。別々に最適な工程で作って貼り合わせれば、両方の性能を最大限引き出せる。その結果、爆速のフラッシュメモリができて、NVIDIAから注目されて仕事が来ている、という状況です。

CBAの断面電子顕微鏡写真(IEDM 2022)。下にCMOS回路、上にメモリセルアレイが接合面で貼り合わされている
実際に貼り合わせた断面。下がCMOS回路、上がメモリセルアレイ。ダイレクトボンディングで一体化(出典: キオクシア IEDM 2022・動画スライドより引用)

実際に貼り合わせた断面写真を見ると、下に回路、上にメモリがきれいに接合されています。ダイレクトボンディングという技術で、これを初めて見たときは「こんなことできるんだ」とビビりましたね。CBAは第8世代BiCSから採用されていて、キオクシアの高速SSDの土台になっています(NVIDIA CMX向けのキオクシアSSDの解説記事も参照)。

AIサーバーのメモリ構成と、これから起こること

一般的なコンピューター・スマホのメモリ構成の図。CPUの中にCORE(計算)とSRAM(仮保存)があり、高速通信でDRAM(Program展開)とつながり、DRAMはFlash(データを保存)とつながる
一般的なパソコン・スマホのメモリ構成。CPUの中のSRAMで仮保存、DRAMにプログラムを展開、フラッシュにデータを保存(動画スライドより)

ここまでをつなげると、一般的なパソコンやスマホは「CPUの中のSRAM(仮保存)⇔DRAM(プログラム展開)⇔フラッシュ(データ保存)」という構成です。

AIのアーキテクチャー図。CPUとDRAM、GPUとHBM、長期記憶のSSDで構成され、GPUの隣にHBFが加わる。1)CMX(2026)、2)IOPS SSD(2027)、3)光SSDがGPUやHBMと矢印でつながる
AIサーバーの構成。GPU+HBMの隣にHBFが入り、SSD側もCMX(2026年)→IOPS SSD(2027年)→光SSDと、フラッシュがGPUに近づいていく(動画スライドより)

AIサーバーはこれにGPU+HBMが加わって、GPUとHBMは1つのパッケージ(CoWoS)になり、外にSSD(NANDフラッシュ)がある構成です。ここで問題になっているのが、NANDは安いけど遅い、HBMは速いけど高くて容量が小さく、もう限界に来ている、ということ。

そこで「足りないHBMをSSDでカバーしよう」という動きが、キオクシアとNVIDIAの提携として動き始めています。推論であふれるKVキャッシュを受け止めるSSD(CMX・Context Memory Storage)はちょうど量産が始まったところで、GPUとSSDを直接つなぐ超高IOPS SSDを2027年に、その先には光SSDも予定されています。さらにサンディスクとSK hynixは、NANDをHBMのように積層してGPUの隣に置くHBFを進めています。詳しくはキオクシアのスーパーIOPS SSDの記事HBFの解説記事で書いていますが、AIのアーキテクチャーの中にNANDフラッシュがどんどん入っていく。元NANDの研究開発者としては、これがめちゃめちゃ楽しみです。

たまに「HBMが十分供給されるようになったらNANDはいらなくなるのでは?」という方がいますが、僕はむしろ逆で、NANDは絶対に必要だと思っています。NANDがDRAMより上とか下とかではなく、それぞれ用途とスピードが違うので適材適所なんです。野球で全員が4番バッターでも勝てないのと同じ(全員が大谷翔平なら勝てそうですが、それはさすがに例えが変ですね)。

半導体メモリの違いを決める3つのスペック——コスト・スピード・容量

最後に、メモリで何が重要なのかをまとめます。メモリの良し悪しはいろいろ言われますが、大事なのは3つです。

  • ①コスト——とにかく安いメモリが求められます。1990年代、日本のDRAMはスーパーコンピューター向けの高品質なDRAMを作っていましたが、パソコン向けの低コストなDRAMに勝てず、性能ではなくコストで惨敗しました
  • ②スピード——データの保存スピード、読み込みスピード、ランダムアクセス、シリアル読み出しなど。いまAI向けには、コストよりスピードが重視される時代に戻ってきています。日本がコストで負けた歴史を考えると、この変化はなかなか面白いところです
  • ③容量など——①②を満たしたうえでの大容量、消費電力、データ保持性、信頼性(壊れないこと)

そして、4種類のメモリの特徴をもう一度。

種類仕組み速さ・コスト電源を切ると主な用途
SRAMトランジスタ6個最速・最も高価(大きい)消えるCPU・GPU内のキャッシュ
DRAMトランジスタ1個+コンデンサ高速・比較的安い(小さい)消える(リフレッシュ必要)パソコン・サーバーのメインメモリ
HBMDRAMをTSVで積層超高速・超高価消えるAI向けGPUの真横
NANDフラッシュ浮遊ゲートに電子を閉じ込める低速・安い・大容量消えないSSD・スマホ・メモリーカード

まとめ

メモリの基礎がわかると、キオクシアやマイクロン、SK hynixの決算ニュースが何倍も面白く読めるようになります。関連記事として、NVIDIAの最新決算解説マイクロンの決算とメモリスーパーサイクルキオクシアの決算解説もあわせてどうぞ。僕の研究開発の経歴は研究開発者としての経歴ページにまとめています。

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