キオクシアの決算がまたヤバい…3ヶ月で営業利益1.3兆円。株価暴落から急反発した理由を解説

もふもふ不動産のモフです。もふもふしたものをこよなく愛する投資家で、元SONYやキオクシアで先端半導体の研究開発者。登録者25万人のYouTube「もふもふ不動産」を運営しています。投資やテクノロジーで役立つ情報を発信しています!

2026年7月31日、キオクシアが2027年3月期の第1四半期決算(2026年4〜6月)を発表しました。たった3ヶ月で営業利益1.3兆円。前回の決算解説で「来四半期の予想が1.3兆円ってヤバすぎる」と書いたのですが、その異常なガイダンスを本当に達成してきました。

しかも面白いのはここからで、この歴史的な決算を出したのに株価は7月に高値の3分の1まで暴落していて、決算後に一転して急反発しています。何が起きているのか、元キオクシアで16年間フラッシュメモリの研究開発をやっていた僕が解説します。詳しい経歴は研究開発者としての経歴ページをご覧ください。

よくある質問
キオクシアの2026年4〜6月期決算はどうでしたか?

売上収益1兆7,671億円(前年同期比約5.1倍)・Non-GAAP営業利益1兆3,262億円(営業利益率75.0%)・純利益8,870億円で、売上・利益とも過去最高を更新し、会社予想も上回りました。AIデータセンター向けSSDの需要拡大とNAND価格の上昇が要因です。

業績が絶好調なのに、なぜキオクシアの株価は暴落していたのですか?

決算前の7月に、米国発の半導体セクター全体の調整と、Viasat特許訴訟で約370億円の賠償評決が出たことが重なり、6月中旬の高値10万8,700円前後から7月末には3万8,000円台まで、約3分の1に下落していました。

決算後に株価が急反発した理由は何ですか?

純利益は市場予想に届かなかったものの、上限8,000億円(発行済み株式の5.5%)の自社株買いと1株→3株の株式分割を同時発表したことが好感され、決算後の取引日に一時12%超の上昇となりました。

キオクシア株の今後のリスクは何ですか?

①市場の期待値がすでに極めて高いこと、②メモリ業界特有のシリコンサイクル(増産投資が数年後の供給過剰につながる宿命)、③特許訴訟や中国YMTCの台頭などの外部リスクが挙げられます。投資判断はご自身の責任でお願いします。

前回の「ヤバい予想」の答え合わせ——ガイダンス超えで着地

まず前回のおさらいです。2026年5月の決算で、キオクシアは26年1〜3月期に営業利益5,991億円(Non-GAAP)という過去最高を叩き出した上で、「次の4〜6月期は売上1兆7,500億円・営業利益1兆3,000億円」という予想を出していました。前回の決算解説記事で「売上の74%が利益って製造業としてありえない」と書いた、あの予想です。

今回の発表はその答え合わせでした。結果は——

  • 売上収益: 1兆7,671億円(予想1兆7,500億円を超え。前年同期比で約5.1倍)
  • Non-GAAP営業利益: 1兆3,262億円(予想1兆3,000億円を超え。営業利益率75.0%)
  • Non-GAAP純利益: 8,870億円(予想8,700億円を超え)

あの異次元のガイダンスを、全項目で上回って着地です。IFRSベースでも営業利益1兆2,700億円・純利益8,422億円(前年同期比で約46倍)。売上も利益もキャッシュフロー(営業CF 8,663億円)も過去最高。日本の製造業の四半期決算として、歴史に残る数字だと思います。

キオクシア決算の中身——売上1.77兆円・営業利益率75%

営業利益率75%という数字のヤバさを説明させてください。僕がキオクシア(当時は東芝メモリ)にいた頃、フラッシュメモリは典型的なコモディティ(汎用品)でした。市況が良ければ利益率20〜30%、悪ければ赤字。この「シリコンサイクル」に振り回されるのがメモリ業界の宿命だったんです。

それが今、売上の4分の3が営業利益という、ソフトウェア企業みたいな利益率になっています。理由はシンプルで、モノの値段(NANDの販売価格)が劇的に上がったからです。工場の生産能力はすぐには増えないので、作れる量はほぼ同じ。同じ量を数倍の値段で売れば、増えた分はほぼ全部利益になる。この構図です。

セグメント別に見ると、SSD&ストレージ事業の売上が1兆1,747億円で前四半期から約2倍(+95.7%)。全社売上の66%を占めます。その中でもデータセンター・エンタープライズ向けが6割超で過去最高。つまりキオクシアの売上の3分の2はもうAIデータセンター関連ということです。スマホ向け(スマートデバイス)も5,257億円で前四半期比+55.8%と強い。全方位で値上がりしています。

なぜキオクシアの株価は暴落していたのか——高値10万円から3分の1へ

「こんなに儲かっているなら株価は絶好調でしょ?」と思いますよね。ところが決算前のキオクシア株は大荒れでした。6月中旬に10万8,700円前後の高値をつけたあと、7月末には3万8,000円台まで下落。わずか1ヶ月半で高値の約3分の1です。

要因は大きく2つありました。

①半導体株全体の調整。米国市場で半導体セクターが売られる場面が続き、日本の半導体株も連れ安になりました。キオクシアは上場来の上昇率が極めて大きかった分、利益確定売りも出やすい状態でした。

②Viasat特許訴訟の賠償評決。7月末、米国の陪審がECC(誤り訂正符号)特許の侵害でキオクシアに約370億円の賠償を命じる評決を出し、これをきっかけに7月28日にはストップ安まで売られました。この訴訟の中身と「実際のリスクはどの程度か」はECC特許訴訟の解説記事で詳しく書いたので、あわせて読んでみてください。

つまり「業績は絶好調なのに、株価は事故と過熱感で3分の1」という、かなり歪んだ状態で決算を迎えたわけです。

決算後に急反発した理由——8,000億円自社株買いと1→3株式分割

決算後の最初の取引日、キオクシア株は一時12%を超える上昇となり、そこから3日続伸しました。実は純利益は市場予想(約9,700億円)にわずかに届いておらず、「業績は下振れ」だったのに、です。

株価を押し上げたのは業績ではなく、株主還元の2本柱でした。

  • 自社株買い: 上限3,000万株・8,000億円(発行済み株式の5.5%・期間は2026年8月3日〜10月30日)
  • 株式分割: 1株→3株(基準日2026年9月30日)

8,000億円の自社株買いは日本企業として最大級の規模で、Bloombergも「想定外」という市場の声を報じています。稼いだキャッシュ(コア・フリーCF 8,272億円)をそのまま株主に返す規模感です。暴落で株価が安くなったところに巨額の買い戻しが入るので、需給的にも強烈に効きます。株式分割は1株あたりの投資金額を下げて個人投資家が買いやすくする施策で、10万円超まで上がって「高くて買えない」株になっていたキオクシアには合理的なタイミングでした。

個人的な見方ですが、これは経営陣からの「今の株価は安すぎる」というメッセージだと受け取っています。

AIでNANDは「実質完売」——データセンターSSDが売上の3分の2に

なぜここまで値段が上がるのか。構図は前回から変わっていません。ChatGPTやGeminiのようなAIの学習・推論に使うデータセンターが世界中で建設され、AIサーバーには大量のSSD(フラッシュメモリ)が必要です。需要が爆発する一方、フラッシュメモリの工場は建設に数年かかるので供給は急に増やせない。2026年分の生産能力は実質完売と報じられる状況で、値段は上がり続けています。

キオクシアはこの追い風に加えて、単価の高いAI向け新製品を積み増しています。NVIDIAと組んだコンテキストメモリ向けSSD「CM10」、読み書き性能を桁違いに高めた1,000万IOPSの「GP1」、さらにその先には光でデータを転送する光SSDも控えています。技術の中身はそれぞれ解説記事を書いているので、興味があればどうぞ。設備投資も2026〜2028年度に年平均4,700億円と発表されており、最新の第8世代BiCS FLASH(CBA技術)は生産比率がすでに50%を超えています。

次はさらに上——売上2.4兆円・利益率79.5%のQ2予想

そして今回も、次の四半期(2026年7〜9月)のガイダンスがまたヤバい。

  • 売上収益: 2兆3,900億円(今回比+35.2%)
  • Non-GAAP営業利益: 1兆9,000億円(営業利益率79.5%)

売上の8割が営業利益という予想です。日経新聞は7〜9月期の純利益予想を前年同期比31倍の1兆2,700億円と報じました。3ヶ月で1兆円を超える利益を「予想」として出せる日本企業は、過去にほぼ例がないと思います。年間に換算すると、日本の全上場企業でもトップクラスの利益水準が視野に入る規模です。

投資家として見ておくべきリスク

ここまで強い話ばかりでしたが、投資家としては冷静に見るべき点もあります。

①市場の期待値がすでに極めて高い。今回、会社予想は超えたのに市場予想(純利益約9,700億円)には届かず、「未達」と受け止められました。ここまで上がった株は「良い決算」では足りず「予想を大幅に超える決算」を要求されます。期待値ゲームがどんどん厳しくなっているんです。

②メモリはサイクル産業だという宿命。いま各社が発表している巨額の設備投資は、2〜3年後に供給として市場に出てきます。過去のメモリ業界は「好況→増産投資→供給過剰→価格暴落」を何度も繰り返してきました。今回はAIという構造的な需要があるので「今回は違う」という声もありますが、僕は元業界人として、サイクルが完全に消えたとは考えないほうがいいと思っています。

③訴訟・地政学リスク。Viasat訴訟の370億円評決のような突発イベントは今後もあり得ます。また中国YMTCがNANDシェアを伸ばしており、中長期では競争構造が変わる可能性もあります。

「業績は本物。ただし株価はすでに多くを織り込んでおり、変動は激しい」——これが僕の正直な見立てです(個人的見解です)。

まとめ

キオクシアについては、キオクシア関連記事の一覧で決算・技術・訴訟までまとめて追えるようにしています。次の決算(2026年11月頃)もこのシリーズで解説する予定です。

YouTube「もふもふ不動産」でも半導体と投資の解説をしています。それでは、また次の記事で!

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