もふ社長
「もふもふ不動産」の運営者。投資家、ブロガー、YouTuberとして活動。「もふもふ不動産」のYouTubeのチャンネル登録者数10万人を超え、Twitterは3万人を超える。2019年3月末にサラリーマンを辞め独立。詳しい自己紹介はこちら。もふもふしたものをこよなく愛し、不動産投資、株式投資、経済、税金、科学、研究開発などを初心者にわかりやすく解説することを得意としている。
もふもふ不動産のもふです。僕は不動産投資家でTwitterやYouTubeやブログなどで資産運用や不動産投資について解説しています。
金売買による消費税還付は、多法人隠しスキームと相性が良かったために爆発的に広がり、多くの不動産投資家が活用してきました。
私自身は1法人で不動産投資を行っているため、金売買による消費税還付を行ったことはないのですが、メリットもデメリットもある手法と考えています。
しかし、この金売買による消費税還付が封じられそうと報道されました。
賃貸住宅オーナーの税逃れ防止 金取引利用し、消費税の控除悪用―20年度税制改正
賃貸住宅のオーナーが建設・取得時に支払う消費税をめぐり、本来認められていない税の還付が控除ルールを悪用する形で不適切に行われているとして、政府・与党が制度改正を行う方向で最終調整に入ったことが25日、分かった。本業とはまったく関係ない金などの投資商品の取引を繰り返して売上高を増やし、消費税の還付を受ける手口が広がっているため、オーナーに還付されないように改める。-20191126 jiji.com–
また、春ごろに国税庁からの通達でも不動産投資のおける消費税還付をふさぐ意見が出されて話題になりました。
1.課税売上割合の計算に含めると事業者の事業実態からかい離することとなる場合には、当該資産の譲渡に係る売上高を課税売上割合の計算から除外する。
2.若しくは、事業者が算出した課税売上割合が事業実態からかい離する課税売上割合と認められる場合の事後的否認規定を措置する。
※税務通信3549号より
金売買などによる、事業実態から乖離した売り上げを除外するような意見となっています。
この記事では、金売買による消費税還付の仕組みや、メリットデメリットなど、不動産投資家の目線でわかりやすく解説していきます。
もくじ
消費税還付の仕組み
まず、消費税を還付の仕組みについて大まかに解説します。
普段買い物しているときに消費税を払っているので、買い物をするときに消費税がかかるイメージはできていると思います。
一方で、事業者にとっての消費税はちょっと違う扱いがされており、消費税を支払う課税業者と、支払う必要がない免税業者に分かれています。
課税売上が年間1000万円を超えると課税業者になります。
課税業者が支払う消費税は、
収める消費税 = 預かった消費税 - 支払った消費税
となっています。
重要なことは、「預かった消費税より、支払った消費税が多いと、消費税が還付される」という仕組みになっていることです。
これは違法でも何でもなく、消費税の根本にある仕組みとなっています。
一般的な課税事業者の場合
一般的な課税事業者の場合にどうなるかをかんたんに解説します。
文房具屋さんがあったとして、鉛筆屋さんから1本10円で仕入れたとします。この時の消費税は10円の10%なので1円です。つまり、1円を消費税として支払っているわけです。
そのえんぴつを100円でペンギンさんに売ったとしましょう。消費税は100円の10%なので10円となります。
ここで文房具屋さんが納める消費税は、
消費税=預かった額ー支払った額=10-1=9円
となるので、9円を税務署に収めるのです。
えんぴつ屋さんに支払った1円が返ってきていることがわかります。
ここでもし、消費税を支払った額が大きいとなると、消費税が還付されるのです。これが消費税還付の仕組みです。
これが重要なので、よく覚えておいてください。
より詳しく消費税を勉強したい方は、こちらの「消費税の仕組みをわかりやすく解説」で解説しているのでこちらを見てみてください。
不動産投資家は免税業者
課税売上が1000万円行かない場合は、免税業者になります。
不動産投資家をされている方の収入は家賃になり、家賃に消費税がかからないのでほとんどの不動産投資家は免税業者になっています。
免税業者の場合、消費税を税務署に収める必要がないです。売り上げで受け取った消費税と、支払いで支払った消費税はそのままです。
つまり、受け取りの消費税が多いとお得で、支払いの消費税が多いと損するようになっているのです。
不動産投資家は消費税の支払いが多い
不動産投資家は、収入で消費税が受け取れず、支払いで消費税をたくさん支払っています。リフォーム費用や管理費用や、他にも不動産を購入した時の建物にも消費税がかかっています。
たくさん消費税を支払っているのですが、課税業者でないので払いっぱなしで還付できないのですよね。。
たとえば、1億円の建物を買ったとしたら、消費税は10%の1000万円にもなります。
もし、課税業者なら1000万円の消費税を還付されるのですが、免税業者なので消費税の還付はできないのです。。
これをどうにかして消費税を還付できないか?
その抜け道を突いたのが金売買でした。
金売買で消費税還付させる
いつの時代も節税のスペシャリストたちはありとあらゆる方法で税金を少なくしようと考え抜いています。。
不動産投資においても、自動販売機を置いたりなどしていろいろと消費税還付をしようとしてきました。
最新の手法は、金売買による消費税還付が主流となっていました。
金売買による消費税還付の概要
かなり複雑なので、ここでは概要をお伝えします。本格的に知りたい方は、税理士さんに相談してみてください。
- 法人を設立し金売買をして課税売上を作る
- 不動産を購入する
- すぐに決算を閉める。課税売上を99%とかにする。
- 3年間で課税売上が50%以上になるように金売買を続ける
大まかにはこのような方法で消費税還付を行ってきていました。
なぜこんなことをしているのかというと、
- 課税売上率が高くないと消費税が全額還付されない
- 3年間の平均課税売上が低いと還付された消費税を返還しないといけない
のような規定があるからです(詳しくは税理士さんへ…)。
金を売買することで、手っ取り早く課税売上を作って課税業者となり、不動産を購入した時の消費税を還付してしまおうというスキームなのでした。
金取引の消費税還付のメリット・デメリット
金取引による不動産投資での消費税還付については、実はデメリットもたくさんあります。
ここでは、私が考える消費税還付のメリット・デメリットを解説していきます。
消費税還付のメリット
メリットとしては、大きく2点
- 初期に現金が戻ってくる
- 多法人隠しスキームと相性が良い
この2点に尽きます。
不動産投資では、どうしても現金がたくさん必要になります。物件購入の頭金であったり諸経費や、リフォーム費用など、とにかくかなりたくさん現金が必要となります。
不動産投資を始めた初期はキャッシュフローもないので、多額の現金が戻ってくる消費税還付のメリットはとても大きいです。
さらに2017年まで流行した多法人隠しスキームと相性が良いのです。消費税還付では、課税売上を作りやすいように新設法人で行う方法が一般的です。
なので多法人隠しスキームを行う場合は、自然と消費税還付を行うことが可能なのです。この2つおかげで、爆発的に不動産を購入される加賀田たくさん増えました。
消費税還付のデメリット
実は消費税還付にはデメリットがたくさんあります。あまり深く考えずに還付されていると思われる方もいるので、ちょっと心配になることもありますが、意外と大きなデメリットが隠れているのです。
- 金の売買の手数料がかかる
- 税理士報酬がかかる(20%くらいが一般的)
- 建物の簿価が減り減価償却が減る
- 法人設立費用、維持費用が掛かる
- 課税業者期間は不動産を売却すると消費税を支払わないといけなくなる
かなりたくさんのデメリットがあるので注意が必要です。
まず、金の売買には手数料がかかります。課税売上を作るために金の売買をするので、手数料がとても高くなってしまうので注意してください。
さらに、消費税還付してくれる税理士さんは、還付金の20%前後の報酬を取ります。仮に1000万円が返ってきたとしたら、200万円以上は税理士報酬がかかると思ったほうが良いでしょう。
そして、消費税が還付された金額の分、建物の簿価が減ってしまうので減価償却が減ってしまいます(売却の時は売却益がかかります)。
最も重要なこととしては、課税業者期間(3年間)に不動産を売却した場合、消費税を支払わないといけないということです。購入した時の消費税が還付されるのなら、売却した時の消費税は税務署に納めないといけなくなってしまいます。
せっかく多額の手数料を払って還付しても、売却にかかる消費税を税務署に返さないといけないというのは厳しいでしょう。。
金売買による消費税還付が不動産投資で塞がれそう
ここまで、不動産投資の王道の一つだった消費税還付が塞がれそうというニュースや、どうやって還付してきたのかについて解説しました。
これまでにも、不動産投資家はありとあらゆる方法で消費税を還付しようとしており、国税庁はその抜け道をふさごうとイタチごっこが続いています。
今回の対策で終止符が打たれるのか?とても興味深いです。
過去に自動販機を使った消費税還付スキームなど、これまでの歴史が楽待でまとめられており、非常にわかりやすいので参照にしてみてください。(参考:自動販売機での消費税還付はこうして封じられた)