
この記事では、簿記や決算書や会計に詳しくない方に向けて、専門用語を使わずにわかりやすく解説しています。
僕自身、サラリーマンで研究開発の仕事をしていたので、簿記や決算書のことは全くわかりませんでした。。なにより、専門用語がわかりにくく意味不明なんです。。
国税庁の確定申告の手引きの中に、貸借対照表の手引き(2018年)があります。。パット見ていただくだけで、かなり難解なことがわかると思います。。僕も挫折しました。
いろいろな専門書を読んだり、実際に自分で会社を経営して税理士さんと会話したり、銀行から融資を受けるために決算書を解説したり実際に使うことで、貸借対照表についてとても詳しくなりました。
むずかしそうに見えるのですが、考え方はとてもシンプルです!
とにかくわかりやすく、子供でもわかるように直観的に解説しました。
この記事では、個人事業主の方や経営者が必要最低限の貸借対照表について理解できるように、とにかくわかりやすく解説しています。さらに応用編として、投資家が貸借対照表をどのように見ているのか、良い貸借対照表の作り方などを解説しています。
この知識は、きっとあなたの会社の経営に役立つでしょう。
もくじ
貸借対照表(バランスシート)は、自分の資産と誰のお金かを明確にする表です

貸借対照表とは何でしょうか?英語ではバランスシート(B/S)とも呼ばれています。
決算書を構成する一つです。
- B/S(バランスシート、貸借対照表)
- P/L(profit and loss statement、損益計算書)
- CF(キャッシュフロー計算書)
貸借対照表の超簡単な理解
貸借対照表とは、
ある時点の持っている資産すべてと、それが誰のお金なのかを書き出した表になります。
- 左側:持っている資産を全部書き出す
- 右側:誰のお金で買ったのか、全部書き出す
です。
つまり、
自分の資産とそれが誰のお金なのかを表にしたもの
なのです。
そして、つねに右側と左側が等しくなるのです(等しくなるようにする)。持っている資産と、それが誰のお金なのかは常に等しくなります。
これも大事なことなので理解しましょう。
次に、これを超具体的に見ていきます。
1万円を元に事業を始めた場合の貸借対照表がどうなるか?

例えば、1万円を元手に個人事業主を始めたとしましょう。
この場合、貸借対照表はどうなるでしょうか?
- 左側:持っている資産を全部書き出す
- 右側:誰のお金で買ったのか、全部書き出す
なので、
- 左側:資産…現金1万円になります。
- 右側:資本…資本1万円になります。
簡単ですね!
起業するときに元手にするお金のことを、資本金といいます!聞いたことあるかもしれません。
この場合、ペンギンさんは自分の1万円を資本としたので、資本金は1万円になります。
これを図にすると、下記のようになります。

自己資本比率とは
自分の資本がどれだけあるか?を表す指標として、自己資本比率という指標があります。
自己資本比率 = (自分の資産)/( 総資産)
となります。今のペンギンさんは、自分のお金だけ起業しており、お金を借りていません。なので、自己資本比率は100%となります。
自己資本比率が高いほうが、借り入れが少ないので健全な経営をしているとみられることが多いです。逆に自己資本比率が高いと、借り入れをしていないのでレバレッジをかけていないというような見方もされます。
- 元手のことを資本と呼ぶ
- 左側:資産…現金1万円。
- 右側:資本…資本1万円。
- 自分の資本の割合を自己資本比率と呼ぶ
仕入れをした場合の貸借対照表はどうなるか?

魚屋さんを行うので、魚を買わないといけませんね(*´ω`)
説明をかんたんにするため、お店の家賃や光熱費などはかからないとして考えています。

としたとします。そうすると、バランスシートはどうなるのでしょうか?

と考えるかもしれません。これは、実はよくある間違いなのです。
5000円で魚を仕入れたので、5000円の在庫(魚)になったと考えるんです。
つまり、バランスシートの左側は、現金5000円と在庫(魚)5000円になります!
これが複式簿記の考え方で、とっても大事な概念になります。何かを買えば、お金が何かに変換されると考えるのです!これは絶対に抑えておきましょう。
右側の資本は1万円のままで変わりませんね!
図示すると、

右側と左側が釣り合っていることも押さえておきましょう。
- 仕入れたら、現金が在庫に代わる
魚が売れたら貸借対照表はどうなる?


5000円で仕入れた魚が、7000円で売れたとしましょう。
この時バランスシートはどうなるのでしょうか?
2000円の利益がでるので現金は12000円となります。
そうすると右と左が合わなくなるのかな?と思われる方がいるかもしれません。
しかし、右側には利益2000円が計上されるのです!

このように、右側と左側は常に釣り合うようになっています。釣り合ってバランスしているので、バランスシートと呼ばれています。
- 利益が出たら、右側に利益として計上されて釣り合う
お金を借りてきて、さらに仕入れた場合の貸借対照表

銀行から20000円を借りてきて、その20000円で魚を4匹仕入れたとします。
この場合のバランスシートはどうなるのか?というと、

左側には魚4匹が20000円の在庫として計上されます。
そして右側には借り入れという新しい項目ができて、20000円計上されています。
12000円から20000円借りてきたので、総資産は32000円になりました!当初10000円でスタートしたのに、3倍ちょっとになっています。
この場合の自己資本比率は、
自己資本比率 = (12000)/(32000) = 37.5%
となりました。20000円も借りてきたので、自己資本比率が100%からさがってしまいましたね。でも、37%だと、全然問題ないレベルです。
- 借り入れしたら自己資本比率が下がる
魚が売れずに腐ってしまった場合

1回目にうまくいったから2回目に大きく仕入れて失敗したという起業の時によくあるパターンなのですが、、残念ながら魚が売れずに腐ってしまいました。
腐った魚は、在庫としての価値がありません。。20000円が0円となり、損失になります。

この場合、バランスシートはどうなるのでしょうか?
左側の魚の価値が0円になるので、持っている資産が12000円になります。
一方で、借り入れは20000円あるので、総資産よりも債務(借金)のほうが多くなってしまいます。
この時のことを債務超過といいます。
債務超過になると、上場廃止になったり、会社としては不健全な状態となってしまいます。。
債務超過には注意しましょう。
- 在庫が売れなくなったら、マイナス(損失)として評価が必要。
経費を使った場合のバランスシートはどうなるのか?
1万円で起業したとして、まず1000円で鉛筆を買ったとしましょう。
鉛筆は自分で使うものなので、在庫ではありません。消耗品として経費で買うことになります。
この場合、1000円の赤字として計上されます。
貸借対照表(バランスシート)では、

このように左側の資産と右側の資本から1000円減って釣り合うようになります。
経費を使えば使うほど、資産が目減りするということを覚えておきましょう!
節税のために経費をたくさん使って赤字を出そうとされる方がいますが、そうすると決算書の資産がどんどん減って、会社としての評価がとても下がってしまうことになるので注意が必要です。
- 経費を使えば、左と右から同じ金額が減る。
- 経費を使いすぎれば、資産がどんどん減るので注意
貸借対照表の見方~わかりやすい解説

ここまで、ペンギンさんが起業した例に沿って貸借対照表がどうなるのかをわかりやすく解説してきました。
経営者として知っておくレベルとしては、このレベルの理解で問題ないと考えています。
もう一歩進めて、実際の貸借対照表を見てみましょう。
資産が3050万円ある会社の決算書をイメージしました。
上の表が簡単なバランスシートの例になります。
左側の合計が3050、右側の合計が3050で同じになってバランスしていますね!
B/Sの左側:持っている資産を全部書き出す
B/Sの左側は資産書いており、自分が持っている金目の物をすべてリストアップし、その金額を書いたものです。
大きく流動資産と固定資産に分かれていると思います。
流動資産は、1年以内に現金に換えられるもの(現金、株など)。手元に現金がいくらあるんだ?ってのを見るので重要な項目になります。
流動資産の内訳は、先ほども出てきた現金や、株や債券、販売したけどお金をもらっていない売掛金などがあります。
固定資産は、すぐにお金に変えられれないもので、現金化するのに1年以上かかると思われる資産を計上します。例えば、保有する不動産や、パソコンや車などがこれに当てはまります。
B/Sの右側:その資産は誰の金で買ったんだ?
右側は、その資産はいったい誰の金で買ったんだ?ということになります。自分のお金で買ったのか(資本)、お金を借りて買ったのか(負債)がわかります。
流動負債とは、1年以内に返済しないといけない借金です。固定負債とは、1年以上後に返済しないといけない借金です。
純資産のところが、資本金と、あとは利益になります!先ほどであれば、ペンギンさんの1万円と、魚を打った利益の2000円に対応してきます。
大まかなバランスシートの見方は理解できたでしょうか?
よくわからなくなったら、基本に立ち返って、
- 左側:持っている資産を全部書き出す
- 右側:誰のお金で買ったのか、全部書き出す
を思い出してひとつづつ紐解いてみましょう。
貸借対照表で投資家がチェックする項目

僕は個人投資家で株式投資を10年以上を個なってきています。投資先の会社を選ぶとき、貸借対照表をチェックして、財務状況が問題ないかどうかをチェックしています。
投資家がどういったところをチェックしているのか紹介します。これは一般的に銀行も同じようにチェックしている項目です。
- 流動負債より、流動資産が多いか?
- 自己資本比率は大きいか?
- 債務超過になっていないか?
流動資産と流動負債の割合をチェック
まず、借金を滞りなく返せるかどうかをまず見ます。
1年以内に返済必要な金額は流動負債でした。
これが返済できないと、会社は破産してしまいます。手元にそれ以上のお金があれば安心とみることができます。
ってのを見るケースが多いです。
自己資本比率のチェック
次に、持っている全資産の中で、自分が出したお金(資本)を見ます。これは自己資本比率と言います。
例の場合、全資産が3050で自分のお金は650なので、650/3050~21%となります。自己資本比率が多ければ大きいほど安心です。
どれくらいの自己資本比率がよいのか?というのは、業界によって異なってきます。
製造業、金融業、ネットビジネスなどなど、業界ごとに様々です。その業界内の他の企業と比べたりするのが良いでしょう。
一番まずいのが、借金が全資産を上回ってしまう場合です。
たとえば、図の状態で借金が5050万円あったとします。その場合、全資産を売り払っても3050万円にしかならないので、2000万円のマイナスになり、債務超過と呼ばれます。
この状態になると、融資が付きにくくなります。上場している会社だと、上場廃止になります。
銀行に好まれるB/Sを意識しよう
融資を受けるためには、良い決算書が必要です。ここでは銀行が好む良い決算書について解説します。
資産に組み込める物は資産にして自己資本比率を上げる
何かにお金を払ったとき、資産にすることも経費にすることもできる場合があります。そういう時は、出来るだけ資産に組み込むようにしています。
例えば300万円かけてリフォームした時、経費にするか、資産にするか選べる場合があります(税理士さんと相談してください)。
経費にした場合…利益が300万円減ってしまいます。そのため、資産が500万円から200万円に減ってしまいます。。
資産にした場合…現金300万円が価値のある300万円の設備に変わったので、資産は500万円のままです。こちらの方が、銀行から見たらよい企業に見えてきます。
このように、資産に組み込んだ方が資産が増えるのでB/S上は見栄えが良く見えます。
デメリットとしては、経費にできないのでその期に多額の黒字が出ている場合の節税にできません。(売却に節税になる)
また、物件購入時にかかる諸費用を、不動産の価格に組み込んで資産化することもB/S上で資産が増えるのでお勧めです。組み込める物はすべて組み込みましょう。
役員のお金を法人に貸し付ける
資本金を入れれば入れるほど自己資本比率が上がるのですが、資本金を入れすぎるとデメリットがあります。
- 資本金を増やしたり減らしたりするのは大変
- 資本金が1000万円を超えると、税金が高くなる
そのため資本金を入れるのではなく、法人が役員からお金を借りる形で自己資金を会社に入れるのがおすすめです。
これを”役員借り”と言います。銀行によって、役員借りを資本として見てくれるのです。自分も役員借りを1000万円以上入れて、自己資本を増強しています。
一方で、会社が役員にお金を貸す役員貸しというのがあります。これは、会社のお金を社長が勝手に使っていると銀行が見るため、絶対にやってはいけません。。もしやっていたら、早急に返済しましょう。1発アウトです。
バランスシートで債務超過にならないようにする
B債務超過とは、借金が資産を上回ってしまい、全資産を売り払っても借金が返せない状態の事を言います。
こういう状態にならないようにしないといけません。また、決算書上は債務超過になっていなくても、実際は債務超過になっているというパターンもあり注意です。
例えば、現金1000万円持っていて、9000万円の物件を諸経費1000万円で購入したとします。これを1億円の融資を受けて購入したとします。総額1億円なので、不動産を簡易的に1億円で決算書に計上しています。
下記図の左側は、決算書上のB/Sです。全資産が1.1億円で、資本が1000万円なので自己資本比率は約9%です。
総額1億円で買った物件ですが、もし銀行の積算評価で5000万円しか出なかったとしたらどうなるか考えてみましょう。
図の右が5000万円だった場合のB/Sです。借金が1億円あるのに、現金1000万円と不動産5000万円しかなく、合計6000万円しかないと銀行は評価します。借金は1億円あるので、4000万円債務超過になっているとみるのです。
こういう状態になると、ほぼ融資は止まります。なので、銀行が算定する不動産の価値に注意が必要です。

市場に出ているほとんどの物件は銀行が評価している物件価格より実際の価格が高いです。そのため、そこらへんに売っている物件を何も考えずに適当に買っていくと、自然と銀行から融資を受けられなくなる仕組みになっています。。恐ろしいことですね。
逆に、銀行の評価価格以下の値段で買えれば、含み益が出て実際の資産よりもいっぱい資産を持っていると銀行が評価してくれ、融資が受けやすくなります。
自分の場合ですが、銀行評価が約5000万円出ている物件を2500万円で購入できました。このような物件を買うと、銀行から見て純粋な資産が一気に2500万円も増えたように見えるのです。
貸借対照表(バランスシート)の見方を初心者にわかりやすく解説

ここまで、貸借対照表を実際に起業した時を想定して、超わかりやすく専門用語を使わずに解説しました。
また、貸借対照表でどういったところを見るのかなど、基本的なことを解説しています。
この記事で、今まで難しく感じていたバランスシートなどの見方がわかって、よりあなたの会社の経営に生きてきたらうれしいです。